Sarururu @Sarururu00 FFTとFF16ほかの二次小説書き。こそっとぽいっと時々置きます。FFT:ディリータ、オーバルFF16:テラディオ、クラジル ☆quiet follow Yell with Emoji POIPOI 16
SarururuDONEFF16 ED後。長いこと行方不明になっていたディオンと、その生存を知らなかったテランスの話。*テランスが二番目の主に仕えています。*勢い任せの話です。奪還「グエリゴールはもはや何も言わない。星めぐりは変わった。そして、私もまた」 かつては想像もできなかっただろう。動揺するあまり、得物を持つ彼の手が震えるなどということは。亡霊か何かを見るようなまなざしを彼が私に向けるなどということは。 愉快な心持ちは高揚に繋がっていく。あとは、彼が過たずに私の手を握ってくれることを願うのみ。 だが、こればかりは分からない、と心の片隅で少しだけ思う。私はもう長いこと行方が知れなかった。生存は絶望視され、既に亡き者として扱われてきたのらしい。私自身、今こうして聖槍を握って彼と対峙できようとは思いもしなかった。そう、幽世とも違う無の世界から引き戻されるまでは。 私を呼んだのは――召喚したのは――誰か。誰の祈りによるものか。 3725 SarururuDONE7~8歳くらいの頃のテランスとディオンのお話。修道院付属学校の休暇にて。※エピローグはオリジン後です(オリジン組は全員生還してます)新しい記念日「明日、帰るのだろう? ご家族によろしく伝えてくれ。きっと、首を長くして待っている」 「うん、この前の手紙で「待ってるよ」って書いてあった。ディオンも……あっ」 幼なじみにして同期生でそして何より大切な親友のディオンが何気ない笑顔と口調で言ったものだから、テランスはその笑顔につられて返事をしてしまった。 失敗した、と思う。失敗とは、ディオンに自分の家族のことを語ったことではない。ディオンに同じような言葉をかけてしまいそうになったことが失敗なのだ。しかも、その失敗を気取られるような声を上げてしまった。 ディオンに帰省を促す手紙は届かなかった。ずっと待っていたのに。 勿論、テランスの失敗は過たずディオンに伝わったようだった。だが、彼はテランスの失言を咎めるでもなく、目を細めて寂しそうに苦笑するだけだった。 3590 SarururuDONEオリジン組全員生還から数年ほど経った頃の冬のお話。ヴァリスゼア歴ではなく、地球の西暦でいうと、2024/12/26深夜のこと。テランスの実家にて。焼き林檎「おやすみなさい、良い夢を」 前ほどではないけれど久々に帰ってきた息子にそう声をかけると、彼ははにかんで「母上も」と呟いて私の部屋を出ていった。 珍しく話し込んだ。とはいっても、深刻な話はしていない。懐かしい話と、今の話と、未来の話。辛いことも多かっただろう「少し前の話」はすっ飛ばした息子に内心で溜息をついた。随分心配したのよ、とは言わないし、言えない。これからも、言わずともいいと思っている。なにせ、「今」と「未来」がほとんど惚気話だったのだから。 だから、大丈夫と信じている。 蝋燭の火が少し風に揺れた。硝子窓も木戸も下ろしているし、暖炉の火も落としていないけれど、それでも冷気は入り込む。肩掛けと膝掛けを持ち、私は日記を書きつけるために文机に向かった。 2843 SarururuDONE「オリジン落下中」のディオンの話。以前見た夢を形にしてみたのですが、ちょっとかわいくなりました(どちらが?)2024/12/30:後半を追加掲載しました。こちらはテデな感じです。迷い子 深く息を吐く。 己の限界を悟り、それを受け容れた。 ここまでだ。そう思った。 心残りはあれど、これでよいと思った。 幕引きを己で――、己の意思で、決められた。 後は。未来は。 己が何処まで贖えたかは分からない。破壊した世界、滅した民、何処まで報いたのだろうか。 それは未だ分からない。だが、己の力のすべてを託したあの兄弟は次の世の光を掴み取るだろう。 信じている。否、己は知っている。 世界にほんとうの光が生み出されることを。 その世界に己は不要なもの。 ようやく、不要なものになれた。 息ができる。ゆらゆらと揺れる眩い光を見上げる。 遠ざかる光を、ただ、見送る。 祈りを込めて。願いを込めて。ひとしずくの寂寥と圧倒的な多幸感に包まれて、落ちてゆく。 10363 SarururuDONE「過去を知らぬ者」の続編。ほぼテランス視点です。これもテラディオと言い張らせていただきます…!続・過去を知らぬ者 ──もう何度目になるのだか。 扉を勢いよく閉め、テランスは盛大に溜息をついた。あの歴史学者見習いが訪なってくるたびに同じようなことを思う。七……八度目だったか、よくは覚えていないが、扉を閉めた拍子に彼が指を骨折したらしいことは知っている。あちらが悪いのだから、と自分は大して気にも留めなかったのだが、とある声は自分を咎めた。 その声は今日はまだ聞こえない。気配もない。 聞きたい、とぼんやり思いながら、テランスは書斎へと向かった。適当に片付けてある書斎の本棚から数冊の冊子を取り出す。内心で暗雲が垂れ込めたが、声が命じるのだから仕方がない。机に置いて、椅子に座る。良質の紙を数枚取り出し、羽根ペンとインクの準備もした。 3480 SarururuDOODLE過去を知らぬ者による、過去を知る者への探求。ディオン・ルサージュとは何者か。それを知りたくて──。※テラディオと言い張っておきます…(どちらもほぼ出ません)過去を知らぬ者「帰ってください」 「……また、それですか」 僕の顔を見るなりそう言った彼に、僕は項垂れてしまった。何度この家に足を運んだのかもう覚えていない。初めてここを訪れたときは、彼は僕の話を終わりに差し掛かるところまで聞いてくれた。二度目は、半分。三度目からは嫌悪感を露にし始めた。露骨に顔をしかめ、扉を閉めようとした彼の行動に、少しだけでもと戸口に手を差し込んだ。……確かそれは六度目のことで、薬指を骨折してしまった。そのときの彼は自らの行ないに驚きはしたが、反省はしていないようだった。悪いとも思っていなかったように思えた。 折れた指が治ってこの家を意気揚々と訪れた僕は、若干マゾヒズムじみているのかもしれない。そうして七度目に会った彼は呆れた顔で僕をしばらく見下ろした。そうして、いつものように扉を閉めた。ひゅうう、と風が吹き抜ける音がした。 1549 SarururuDONE「後朝の歌」に関するディオンとテランスのお話。本編軸とED後に分かれています。寒夜『外大陸の果ての国には、別れの後に詩を交わすらしい』 未だ外は闇。鎧戸を閉めたにも関わらず、嵌められた玻璃窓は霜がついていた。クリスタルと暖炉で部屋はそれでもほのかに暖かいとはいえたが、その暖かさは「私」が望むものではなかった。 厚手の夜着を私に着込ませて、最後に胸元の紐を結んでしまったテランスに、私はそんなことを言った。 『詩を? 別れ……の後に、ですか?』 言葉遣いも従者のそれに戻してしまった彼に、私は頷く。不審そうな表情が可愛らしくて、手に触れた。 『朝を共に迎えられぬ恋人同士が、そのときの感情なり想いなりを詩にして届けるのだとか。風流といえば、風流だな』 恩師との雑談の折だったろうか、「愛」について語らう機会があった。テランスの激白を聞いた後のことで、己の感情を持て余していた頃だったと思う。相談相手となるような人物は他に思い描けなかったから、私は恩師に彼への感情をひとしきり語った。語ってしまった。 1940 SarururuDONEテラディオについて丸さんから冒頭およびゴールのお題をいただきまして、書かせていただきました!ポイピク掲載にあたり、少し修正しています。タイトル英語はGoogle翻訳さんに依頼しました。お題くださった丸さんありがとうございましたー!I forgive you who can't forgive yourself 彼の機嫌が急降下したのは何が切欠だったのか、どれだけ頭を捻ってもわからなかった。朝は普通だった。彼に予定を伝えて、隊の編成をし、安全を確保しながら駐屯地へ。昼食を共にして、各々団員への指導を行った。それが今、どうしてこんなことに──? 我も我もと打ち合いに食い下がる者は今日は珍しくおらず、ディオンは若干の拍子抜けの気分で駐屯地内の自室へ戻ろうとした。悲しいかな、書類仕事を持ってきたので、それを片付けるつもりだった。その前に、とテランスが担当している練兵場へ向かう。彼をピックアップするついでに、指導の様子を盗み見するのも良いと思った。 普段、己には見せないテランスの表情を見るのがディオンは好きだった。それに、勉強にもなる。 1655 SarururuDONE8月31日は「I Love Youの日」なのだそうで、テラディオで書いてみました。ED後生存ifから少し時間が経った頃のふたりと隠れ家の皆です。ただ ひとつの ゆいいつの 依頼された魔物退治と、その後に反省会と称して行われた「石の剣」の練兵を終わらせてテランスが隠れ家へ戻ってきたのは、宵も半ばという頃合いだった。当然、舟守のオボルスには「陽が暮れてから舟は出したくねえんだよ」と文句をたっぷりと言われたが、同乗したドリスとコールが宥めてくれたので、テランスは割増料金を払わずに済んだ。 隠れ家には、久々に滞在することになっている。別の場所に住まうようになってしばらく経つが、隠れ家が持ち合わせている空気感は今も慕わしい。ドリスとコールとは別れ、ひとりで昇降機に乗り込んだテランスは「何故だろう」とぼんやりそんなことを思った。 ──おそらく、本当に様々なことが此処で起きたから。 4062 SarururuPAST「カミューさんのマントの謎」というお題で寄稿した幻水2のお話です。CP要素はあんまりありませんが、赤と青の人が登場します。THE SKY IS「──そうか」 かみしめるように呟いた傍らの親友に、彼は頷いた。 そうして、明け方の空を見上げた──。 sunshine is. 賑やかな声が耳に心地よく語りかける。いつもと変わらないその光景に、それでも彼はふと足を止めた。 自分の名を耳にしたような気がしたのだ。 僅かばかり視線を動かしてみる。それだけで声の主達は簡単に分かった。芝生に座る少女達。ナナミにニナ、ミリー、メグ、テンガアール。中庭が風変わりな貴族達の語らいの場であるとすれば、この芝生は彼女達のものだった。 同盟軍の中でも年若き彼女達は、時には一心に何かを語り合い、そしてまた時には笑い転げている。その様子に人々は──もちろん、彼自身も含めて──心に暖かいものを得るのだ。 5052 SarururuDOODLE「カード」を選べと言われるディオンのお話。テランスの影はどこにもないですが、一応テラディオ前提。8月末までに続きを書…く予定。雑貨まつり その日、恩師・ハルポクラテスから借りていた書物を返そうと隠れ家を訪ったディオンは、大広間に入るなり、その異様な賑わいに面食らった。 普段は主に通路代わりに使われている場である。突発的に宴になってラウンジだけでは用が足りなくなった場合には急遽使われることもあるが、それとはまた別の類の熱気がこの場にはあった。 「これ、いいなあ」 「かーわーいーいー! 私、これにする!」 「決めきれない……。あれも、これも素敵すぎる……」 「え、全部? どれだけ買い込むつもり?」 「だって、この日のためにやりくりしたのよ!」 「私も。お給金くれるってシアワセをありがとう、シド……」 「そして、トキメキの場を作ってくれてありがとう、カローン……」 2403 SarururuDONEED後のクラジル(クライヴ×ジル)。ホルストさん作曲のカバー曲が元ネタ。曲(歌詞)が分からないと「?」になってしまいますが、雰囲気でお読みいただけますと幸いです。スパイラル ゆっくり、そう、ゆっくり、音色は高みに。 同じフレーズ、同じメロディ。それなのに、調べは違って聞こえる。螺旋の階段を上がるように、天へと向かうように。 外大陸の文化に触れたという吟遊詩人と交流を持ったルカーンが新たにつくった歌は、これまでの詩吟とはまるで違うものだった。 物語ではない。誰かを称えるものでもない。恋の歌でもない。曖昧な歌詞、繰り返されるフレーズ。 「……どうかな?」 試奏なんだけど聞いてくれるかな、と請われるままにジルはルカーンの新曲を聞いた。そうして心の中に浮かんだのが、先の想いだった。 「不思議な曲ね……」 素敵な曲、とは言い切れなかった。不思議で、心の何処かに引っかかる曲。忘れた頃に思い出しそうだった。普段は心の奥底で眠っている感情。──それを無理やり揺り叩き起こされて、突き付けられたなら。そんな時に聞いたなら、涙が溢れただろう。 2089 SarururuDONEテデ(???)の夏休み13日目です。ED後の隠れ家でのお話。ディオンとキエルとテランスのお話です。夏休み13日目 デートをしないか、とディオンに誘われたキエルは、思わず「え?」と訊き返してしまった。 「デート?」 「そう。そなたがよければ、の話だが。今夜……いや、明日の夜だな。少し時間をくれないか?」 曇り空を見上げ、ディオンが言う。 「え、えええ? 私? お兄さん、何か悪いものでも食べたの?」 自分でも何を言っているか分からないな、と思いながらもキエルはディオンに訊ねた。すると、彼は微笑んで、人差し指を自らの唇に当てた。少し声が大きい、ということらしい。 「キエルは面白いことを言うな。私の体に悪いところなど何もない。ただ、そなたと少し時間を共にしたいだけだ」 「は、はい……。私はいいけど、テランスさんは?」 「テランスには内緒だ」 3053 SarururuDONEテデの夏休み初日です。どこにも行かない行けないと思っているふたりですが、さてどうなるでしょう。夏休み初日「……はあ?」 早馬で届いた書簡を読んだディオンは、その内容に唖然とした。 意味が分からない。そんなはずはない。間違いなのでは。あるいは、罠か。何か奸計が──そう、あの魔女めが──為されているのではないか。そういった考えがぐるぐると頭を回り、打ち消すために数度書簡を読み返す。だが、書かれてある文字列は最初に読んだものと何一つ変わらなかった。……当たり前といえば、当たり前なのだが。 思わず出してしまった声が珍妙だったのだろう、控えていたテランスが「ディオン様?」と声をかける。 「猊下からは何と?」 「ウォールードとダルメキアからの申し出を受諾したらしい。……酷暑その他諸々の事情により夏季休暇停戦、だそうだ」 1556 SarururuDONEED後、オリフレムでのディオンとテランスです。ディオン視点。完成の際にタイトルを改題しましたが、回収できてない部分があるので続くかも。続かないかも。A Bookmark and Twelve Cards 空がやけに高く見えるような気がした。 たなびくのは巻雲。空の色はやや薄く、それでいて吸い込まれそうなほどに深い。もう少しで巡る季節を前にして、この季節特有の空色をしていた。 幾日か時を進めてしまえば、風が強く吹き始める。今はかすかにしか聞こえない潮騒も、少しばかりその存在を主張するのだろう。 空に、海に、薄い灰色が乗る季節。 「ディオン様?」 立ち止まって空を見上げるばかりのディオンの背後でテランスが声をかけてきた。いかがなさいましたか、と続けた彼にディオンは向き直った。 一歩だけ踏み出し、テランスの瞳を覗き込む。テランスは一瞬たじろいだが、すぐに落ち着き払った様子を見せた。問いをまなざしに含めるも、ディオンの好きにさせることにしたらしい。 7373 SarururuDONEED後生存ifのテラディオです。未来への進み方とは。※pixiv掲載中のシリーズから続いています。夢の合鍵 あとで巻き込むからな。 隠れ家の主が放った言葉は、確かにきっかけではあった。驚く気配を見せた彼の隣で、そう思った。 思った、のだが。 ──こんな展開になるとは。 デッキでの光景を眺めながら、テランスはここに至るまでの経緯を思い出した。 茶を喫していたのだった。 ラウンジの卓を共に占めたのは、初対面のダルメキアの青年。褐色の肌の持ち主は昇降機前で出会った当初こそ警戒した様子を見せたが、名乗ったテランスには何か思い当たるふしがあったようで、「ああ、あんたが」と頷いた。そしてすぐに「あんたってのはまずいか。なんて呼べばいいんだい? テランス卿、テランス様、テランス殿……」と唸り始めたので、テランスは少し笑ってしまった。 14406 1