雌獅子は愛を抱く⑩ 車はふ頭の倉庫街の隅に停まった。
奥の方に見える活気がある辺りと違い、この一角の倉庫はすでに使われていないようだ。壁の色は褪せ屋根には穴が開き、付近に人気はない。
案の定宜しくない人種の溜まり場になっているようで、辺りには度数の強い酒の瓶や缶に煙草の吸殻や空き箱、使用済みの避妊具やそのパッケージ、それから意味ありげなアルミホイルの切れ端や中身が無い透明のビニール袋、使い古された注射器まで転がっている。
はてさて此処で一体何をしていたのやら、などとは考えなくても分かる残骸に顔を顰めた獅子神に、天堂は厳かに告げた。
「このような場所に出入りするなど、自ら咎人であると自白するも同然だ」
この治安の悪い一角で誰が何をしていようが獅子神の知った事では無いが、此処に娘が囚われているとなれば話は別である。
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