「癒」美濃部は焦っていた。
突然ハンター協会の会長から呼び出されてしまい、いつも付きっきりで一緒にいる旬とゲードに行けなかった。
「大丈夫だといいけど…」
そう祈りながら美濃部は走ってまだ潜っているであろうゲートへと向かった。
美濃部がゲートの前に着いた頃には既に攻略を終え、次々と下級ハンター達が出てくる。しかし旬だけが一方にゲートから出てこない事に、美濃部は一人肩を掴んで聞きだした。
「あの、水篠旬という人は…」
「え?あぁあのE級…?さあ、さっきまで居ましたけど…」
「は?最後まで見てないんですか」
「そ、そんな事言われましても…」
もういいですと話を切り上げ、美濃部は無理やりゲートの中に入り込めば、何処かで変な声が聞こえてくる。
その音を頼りに歩いていると、旬が複数人の男達に囲まれて、胸倉を掴まれているのが見えた。
「E級のクセして生意気だな、それは俺達の魔法石だ」
「お、俺が倒したんだ、俺のだ…ッ」
「兄貴、さっさと殺しちゃいましょうよ」
「ハッ、それもそうだな」
男が持っていた武器で旬の首を狙って振り下ろした瞬間、美濃部はメイスで弾き飛ばした。
「何を、してるんですか?」
「ヒィッ!?み、美濃部剛…あのS級の…!?」
「もう一度聞きます」
美濃部はメイスを力いっぱい握りしめながら男に近づく。
「何を、していたんですか?」
「「「ヒィッ!!!」」」
―――――――――
「えっと、あの…助けてもらってありがとうございます…」
「いえ、当然の報いなので気にせず」
美濃部の手により、旬を囲んでいた男達はハンター協会へと手渡され、美濃部は旬の腕を無理やりひっぱり自身の家へとあがらせた。
そうして今旬は、ソファの上で正座中で冷や汗をかいている。
「なんで俺を助けてくれるんですか……俺、美濃部さんに返せるものなんて、何もないです…」
「何も見返りは求めてませんよ……そろそろ俺、怒りますよ」
「す、すみません…」
悪い癖だった。旬は自身を助けてくれる人間はほとんどおらず、逆に助けてくれる人間は何か見返りを求めてくるばかりだった。だから美濃部に対しても同じ対応をしてしまった。
「見せてください、殴られたんでしょう?」
「嫌…です……」
「どうしてです?」
「み、見苦しいので…」
どうしても見せてくれないんですか?と何度聞いても、旬は頑固に美濃部に見せなかった。それに痺れを切らし、美濃部自身が先に上着を脱いだ。
「俺も脱ぎました、なら水篠さんも」
「ど、どうしてそうなるんですか…」
「早く」
おどおどとしながらも旬はパーカーを脱ぐと、先ほど殴られた跡がくっきりと残っていた。
それを見た美濃部は旬に対してでは無く、先ほどの男達に殺意が沸き「やっぱりメイスで殴るべきでしたね」と呟くと、旬は「そ、それはだめです!」と美濃部を止める。
「…冗談です、半分」
「み、美濃部さんのそういう所、本当に怖いです…」
「なら二度と俺に隠さないでください」
素手で美濃部が旬の痣になっている所に当てると、ふわりと輝きながら痣が収縮していく。
痛みが和らいだのか、旬の表情も柔らかくなっていく。
「他には?」
「えぇっと……」
「ありますよね?」
「うぅぅぅ…」
結局美濃部にあちこち肌を触られ、次第に下の方に熱が溜りだし、旬がおねだりをして美濃部に意地悪されるのは、また別の話。