ハッピーバースデイ!ダンジョンを攻略し、現実世界に戻って家に帰ろうとすると葵が玄関に立っていた。
「何してるんだ…」
「お兄ちゃん、今日は夜まで帰ってこないで」
「はっ?」
バンッと目の前で閉められ、鍵の閉める音が聞こえた。
一体なんなんだ……
無理やり開けることも可能だが、特に帰ってもやることは無いので外に出ていくと、目の前で車が止まる。
ウインドウが開けられると、諸菱が手を振りながら後ろのドアが開いた。
「水篠さん!諸菱賢太、迎えに来ましたー!」
「俺は呼んでないけど…」
「僕が勝手に迎えに来たんです!さあ乗ってください〜!」
「いや、俺は……」
と、断ろうとしたが…運転席から諸菱は降りて、旬の背中を押し座席に乗せようとしてくる。仕方なく旬は車の中へと入った。
「おい、ちゃんと準備出来てるんだろうな?」
「こちらは大丈夫ですけど、白川社長こそケーキはどうしたんですか?」
「あ?上手くいってるに決まってんだろ、みてみろこのケーキを」
後ろにある三段ケーキを最上に見せると、メガネを上げながらケーキに近づく。
丁寧に着飾られたクリーム、洗練されたイチゴが乗せられている。
「まあ、いいんじゃないですか?」
「なんで上から目線なんだ」
白川はため息をつきながらケーキを運び出し、会場の前へと設置する。
その会場にはアメリカから来た国家権力級を持つトーマス・アンドレ、クリストファー・リードに、日本のハンター協会会長の後藤、その隣にいるのは犬飼。S級ハンター達も全員集結しており、各々の会話をしている。
「そういえば、水篠ハンターはいつ頃到着するんですか?」
美濃部は隣にいた黒須に向けて質問すると肩をくすめて「さぁな、到着するのを待つのみだろ」と返す。
皆それぞれスーツを着こなし、片手に持つ赤いワインを煽る。
「いやぁ、本当にあるんですね、本人が誕生日を忘れてるなんて…」
「俺だって覚えてねぇよ、一々祝ってもらう歳でもねぇからな」
「えー、寂しくないですかそれ」
黒須と美濃部が会話していると後ろからサングラスと体の大きさが目立つ男が近づいてきた。
「What conversation are you having」
「うっ……わ……」
突然肩を掴まれた美濃部は身を引いてしまう。アメリカの国家権力級の男が話しかけてくるとは思わず、顔を引きつらせた。
「ミズシノハンターはまだか?」
「もう少しなんじゃないか?」
黒須はドアの方へと顔を向けるが、まだ来る気配は無くワインを煽った。
「後々に来るだろう、ところでなんで君がいる?」
しれっと隣にいるレナートに対してクリストファー腕を組みながら問いかけると、レナートは顔を顰める。
「うるさい、私も祝っていいだろう」
「はっ」と嘲笑いながらおかわりのワインを貰いに行こうとクリストファーは輪から離れた。
「ふん」
と、レナートも飲み直す為にワインを貰いに行こうと動こうとすると、扉が開かれると諸菱が顔を出した。
「みなさん、準備お願いしますー!」
ワインを入れ直したクリストファーはすぐにその辺のテーブルにグラスを置き、クラッカーを持つ。
皆もそれぞれクラッカーを持って扉の前を囲むように立った。
「ほら、お兄ちゃん!行くよ!」
「い、一体なんなんだ!」
葵が扉を開けると同時に、旬が無理やり前に出される。それと同時にクラッカーが大量に鳴らされた。
旬は驚いた顔のまま固まっていると、諸菱がパイを持った状態で現れた。
「水篠さん!誕生日おめでとうございます!!」
「ぶっーーーーッ!」
パイを顔面でまともに食らった旬は衝撃で後ろへと倒れそうになり、影から出てきたイグリットがそれを受け止めた。
旬は笑いながら、今度は葵のパイを顔で受け止めた。