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ざわざわと周囲を満たす喧騒、砂糖の焦げる甘い匂い。無数の屋台から漏れる白熱灯に照らされる境内は、普段のひっそりとした神社とはまるで違って見える。
「おお……流石にすごい人だな」
「だな」
感嘆のような声を上げながら隣を歩く博雅に、晴明がそっと視線を向ける。きょろきょろと辺りを見回す様子は楽しげで、晴明も自然と、頬の辺りが緩むのを感じた。
「……あっ、ベビーカステラ!懐かしいな」
「食べるか?」
「ううん……いや、先にお参りを済ませてからにしよう」
律儀なやつだ、と内心思う。年に一度の節分祭り。今日ここに来ているほとんどの人間は、きっと信心ではなく、縁日という非日常を楽しみに来ているに違いない。
「不思議だな……なんだか何もないときと比べて、随分広いように感じる」
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