episode1 ユウ「タイガ!」
「タイガっ!」
「タイガぁ」
拝啓、神様。
なぜ俺は同性の友達から迫られてるのでしょうか…!!!?
episode1 ユウ
いつものことだった。いつものように俺はユウと話していた。するとクラスの女子がユウにぶつかってしまった。ユウは他の男子よりも体格がよく背も大きいためぶつかってしまった女子は軽くふらついていた。ただ女子は他の女子に間一髪のところで助けられており、怪我人は出なかった。
出なかったのだが
ぶつかられた衝撃でユウの体が俺の方向に傾いたのだ。あいつは体幹がクソ雑魚なのでこうなってしまったら巻き込まれて倒れ込む。目の前の衝撃に目を瞑って待っていたが、いつまで経っても衝撃は訪れない。恐る恐る目を開くと、こいつの腹たつくらい綺麗な顔が近かった。近かったっていうか、喋ったら息が掛かるくらいの距離だった。近いだなんてもんじゃない。こいつの顔としっかりとした体格しか見えないこの景色。倒れる前に壁に手をついて防いだとすぐにわかった。
「えと…ごめん、大丈夫か?」
正直、イケメンとここまで近距離だと大丈夫なものも大丈夫じゃない。
くっそ、普通にイケメンなんだよなお前!
「あ、俺は大丈夫…」
返事と共にこいつの顔を見上げた俺。するとなぜか顔をりんごのように真っ赤にして「と、トイレ!」と叫んでどこかに消えてしまった。なお、走り去っていった方向はトイレとは正反対だった。
「なんだったんだあれ…」
あいつのいなくなった場所を凝視しながらそう呟いた。
「…無自覚って恐ろしい」
溜め息混じりなそんな一言が後方から聞こえた。