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    a3m_ryu8

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    a3m_ryu8

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    チャンドラからグラビア本強奪したにょいまんさんのことを知ってチャンドラに声掛けに行くコノエ艦長の話

    君本当にあざといの好きだね……「チャンドラ中尉、少しいいかな?」
    「いやです(はい)」
    「心と態度が逆だな」
    僚艦の艦長に指摘されれば、一クルーである中尉のチャンドラでは何も言うことはできない。拒否権などあるはずがないと、心の中で盛大に溜息をついて渋々と答えた。
    「失礼いたしました……」
    唯一の救いがあるとするならば、ここが勝手知ったるオーブ軍港だということだろうか――

    渋々と着いた先は食堂で、人がまばらであればコンパスの制服はよく目立つ。特にチャンドラの着用する青服はオーブ軍ではないと一目でわかる。そして、ザフトの白服に似たシルエットを持つ佐官服もそれは同じだった。
    上官からの優しさ、はたまた賄賂か、もしくは牽制かにコーヒーを奢られ、周囲に人のいない机に腰掛けた。
    「楽にしてくれ」、と言うコノエの言葉に甘えてチャンドラは素直にコーヒーを啜る。何を言われるかは想像がついているが、出来れば回避したいと希望を抱く。しかし、不可能なことは向けられる逃がす気のない柔和な笑顔で一目瞭然だった。
    「で、本題だけども大丈夫かな?」
    「駄目ですって言ったら見逃してもらえます?」
    「そうしたら個人的にチャンドラ中尉のオススメの居酒屋でも教えてもらおうかね?」
    「でしたら是非とも今でお願いします!!」
    飲んでいたコーヒーを慌てて置いて、背筋を伸ばしてわざとしっかり敬礼をする。今ならば人の目もある。時間にも制限がある。長時間に渡って独占欲と牽制とを浴びずに済むならばそれに越したことはあるまい。同僚の知らない一面を見たいかと問われれば好奇心は是を出すが、生憎チャンドラには馬に蹴られる趣味はない。
    そんなチャンドラの態度にコノエは人の悪そうな笑みを浮かべた。
    守りが得意で逃げ腰の艦長だとの噂を聞いたことがあるが、全て計算の上なのだろうとチャンドラは内心諸手を挙げた。
    「アーノルド……ノイマン大尉のことなんだけども」
    「一応確認しますけど、コノエ大佐のプライベートについてのお話でよろしいでしょうか」
    「ん、ああそうだな。アーノルドが君の所に行ったよね?」
    想定していたことについての質問で、面倒くさいを必死に隠してチャンドラは先日のことを思い出した。

    「お前、可愛い服ならどんなのが好み?」
    食堂で休んでいたチャンドラに突然多種多様な可愛い服が示されたデバイスを掲げながらノイマンは話しかける。
    「なんで俺に聞くんですか?」
    「お前そういう可愛い子好きじゃん」
    何を聞いてくるのかと不思議を顔に浮かべて隣に座るノイマンに、チャンドラは面倒くさいを顔に貼り付けて答える。
    「女性物ファッションなんて女性陣に聞いてくださいよ……」
    「男の意見が聞きたいんだよ」
    少しムッとした表情を隠すことなく伝えられてもチャンドラには関係ない。むしろ、消極的ですら関わりたくない話だとゲンナリする。
    「そう言うのは本人に聞いてくださいよ……」
    「どんな格好でも好み、って言われたらそれ以上聞けないだろ……」
    「じゃあそういうことなんですよ!」
    ほら来た思った通りだ!とほんの気持ち女性上官から距離を取れば目敏く指摘される。
    「何で距離取るんだよ?」
    「俺は馬に蹴られたくないんですよ」
    「そんな人じゃないだろ?」
    「アンタは男の独占欲を甘く見すぎなんですよ。フラガ大佐ばりの牽制ですからね」
    「そうか?そうは思えないけど……」
    「俺はアンタたちがいつか艦橋でキスするんじゃないかって思ってますからね。賭けます?」
    「しねえし賭けねえよ」
    いたく不服そうだがチャンドラにとっては本気だ。
    恋人同士の直属の上官が余りにも隠すことをせずに過ごすからか、ノイマンも無意識に恋人との距離が近い。自分も大分上官カップルに毒されているらしく気が付くのが遅くなったが。それに気がつけば、僚艦の艦長が時折こちらに向けていた冷たい視線はザフトだオーブだ連邦だの所属違いによる思うところではなく、軍人らしからぬ密度で仲の良い俺たちへの嫉妬・牽制だと思い至る。ラミアス艦長はもとより、ノイマン大尉に関しても女性であることは忘れたことはないが女であるとは思ったことはない。いや、連合の初顔合わせの時にバジルール中尉含めて「イイ女」って思ったことは認める。でも、その時だけだ。それ以降にそんなことを思う余裕も、そんな風に思わせることもなかった。だからこそ、この人たちを女扱い出来るフラガ大佐もコノエ大佐も恐ろしいわけで。
    「ナニ呆けてるんだよ?」
    「いや、皆恋人がいていいですね~って」
    「嫌味か?」
    「まさか。純粋な感嘆ですよ」
    やれやれ、と小さく左右に首を振って立ち上がろうとする。これである程度は話題を逸らせただろうか、と思ったがやはりこの同僚はそんなに甘くなかった。
    「お前の好みのグラビア何冊か貸してくれ」
    「なんでそうなんの?!」
    思わず大きな声が出る。どこか変な方に思い切りがいいのだこの友人は。
    そんなチャンドラの頭の痛みなど知る由もないノイマンはキョトンとした顔を取り繕うことなく先を進める。
    「結局服なんて見た方が早いだろ」
    「それなら恋人に借りてくださいよ……」
    「あの人がそんなの持ってるわけないだろ?その辺お前のなら大体どんなのか知ってるし」
    (ああ、アークエンジェル時代にトノムラやパルとバジルール中尉の検閲を逃れた秘蔵のグラビア交換会をしてたがためにこんな目にあうのならば、当時に戻ってそんなことをするな、と釘を刺してやりたい……)
    そう遠くを見た自分は悪くないとチャンドラは何に対してか心の中で言い訳をする。
    「絶対グラビア本の一冊二冊は持ってますって!むしろグラビア持ってなくてもエロ本ならあるでしょう?!あの人だって軍属長い男だぜ!」
    むしろこの言い方は自分の方がセクハラにならないだろうか?いや、さっきのグラビアの下りなんて言うのは完全にパワハラだからおあいこだろう?なんてチャンドラは必死で頭を回転させるが、やはりどこかが変に鈍感な友人は何も気にせずに続ける。
    「言って貸してくれるかあ?でも持ってる可能性があるなら賭けてみるのも手か?」
    自分からターゲットが外れたならば一安心だが、ここでノイマンが恋人に
    「チャンドラが、男ならエロ本くらい持ってるって言ってたので」
    なんて告げ口されようものなら多分牽制どころで済むわけがない。思わず口を滑らせたことを後悔すれども、今チャンドラの運命を握っている当の本人はきっと何も気づいてなどいない。せめてフラガ大佐の方に行くように言えばよかったと思うが後の祭りだ。
    今後の自分の身の安全を天秤にかけたら傾く方なんてわかり切っている。
    「どんなのが見たいんだよ……」
    チャンドラが聞けば一気に花が咲くかの如く嬉しそうな顔をする。そんな顔誰彼構わずするのは本当に止めた方がいいとは、いくらチャンドラでも言えるはずがない。誰にでも優しく厳しい上官たちだからこそのアークエンジェルだ。それに勝手に嫉妬する旦那が悪いんだ、と心の中で悪態をつくがきっと本人に言える日は一生来ないだろう。
    「お前が一番かわいいって思う格好してるグラビアがいいな」
    確か前にどこかでユリ―軍曹がノイマンはわかりやすく可愛いを選ぶのが苦手だって話をしていた気がする。
    長い溜息を一つついて、承諾を伝えた。
    次の日、三冊ほどわかりやすく清純派で可愛い清楚な王道グラビアを貸したが一言、
    「可愛いって大変なんだな」
    と言われ、何だか納得がいかないがこれで何事もなく済めばいいとチャンドラは心中祈った。

    そんな何か所か自分が目の前の上官という名の同僚の恋人から牽制をくらいそうなことを思い出せば、チャンドラはどうにか安全そうなところだけを掻い摘んで伝える。
    「何冊か俺の清純派可愛いグラビア本何冊か強奪……、いや借りていきましたよ」
    「それ本当にただのグラビア本かい?」
    わかりやすく不審げに目を細めて聞いてくるコノエに、呆れたように返す。
    「当たり前でしょう。アークエンジェルは艦長も女性ですよ」
    当たり前だが目の前の男は知らないのだ。
    かつてアークエンジェルは艦長以下主要士官がパイロットのフラガを除いて全員女性だったという状況を。ヘリオポリスの学生たちが緊急で多く志願したことを。当時の副官が風紀に厳しいことを。狭い中に長時間いれば溜まるものもあるが、それでも教育上よろしくない物は極力排除しようと皆で頑張った結果全年齢健全なグラビア本しか残らず、その時の気持ちのまま気が付けばここまで来てしまったことを。
    当然だと答えたチャンドラをまだ訝し気な目では見るが、とりあえず納得したのかそれ以上の追及はなかった。
    「確か君の趣味って相当あざとい感じだったよね?」
    「そっくりそのままお返しいたしますよ」
    かつて秘密のグラビア交換会を見てしまったミリアリアとカガリから
    「チャンドラさんの趣味って、なんかオジサンくさいですよね」
    「そんな恰好、妄想とかでしか見ないんじゃないか?」
    と言われたことを思い出しながら、チャンドラはほぼ同じような趣味のグラビア本のところで反応するコノエに棘のある声をかける。一番近い同僚兼友人をとられたのだ、これくらいは許されるだろうと。
    「だから、まあ、そう言う感じじゃないですかね?」
    せっかくアンタの好みになろうとしてる強い人に、俺の知ってる限りのアンタの好みを押し付けたんだから精々感謝して欲しいものだと、複雑な顔をしている上官に心の中で舌を出した。

    「君本当にあざといの好きだね……」
    「いや、アナタがそーゆーのお好きだと思ったんですけど?」
    「そりゃあ嫌いじゃないよ。彼女に任せると動きやすさ優先なのかボディライン出る服ばっかり選んでくるからね……それに比べれば目のやり場には困らないしね」
    「ボディライン如きで目のやり場に困るような恋愛しかしてないとは思えないんですけど」
    「本命は別、ってことだよ」
    「爛れた恋愛してますねぇ〜」
    「だから他の男が見るようなあざとい服も考えものだよね」
    「素直に好きな服教えた方がいいんじゃないですか?」
    「せっかく色々な服を着てくれるんだ、好きな物を着て欲しいだろう?」
    「アイツそんなに色んな服着てくんですか?……ホント、愛されてますね」

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