〇〇の軌道「お前射撃下手だったっけ?」
「人並みなはず……」
「ボウリングと射撃に関係はないと思うけど……」
「2ゲームやってオールガーターはもはや狙っているのか?」
「何のメリットもないじゃないですか……」
アーサー、ハインライン、ノイマン、チャンドラは交流の一環としてボウリングに来ていた。まあ、三次会というやつだ。とは言え、全員酒を入れていない素面状態である。酒の利点を認識できない者たちにとって飲み会など無意味なのだが、とは言え懇親はするべきという生来の真面目さを斜めに発揮した4人は折角だからと普段行うことのないボウリングに来てみたのだった。
そこで発覚したのがノイマンのボウリング音痴だった。
「くの字でガーター出すなんて普通はうまい人間の行き過ぎカーブでは?」
「かと思ったら一直線で一目散にガーターいくし」
「ストライク狙えそうな一直線だったところで突然垂直に曲がってガーター出したのが不思議でならないよ僕」
「好き勝手言われても……そうなったもんはそうなったんだから仕方ないじゃないですか……」
バツが悪そうにノイマンは目線を逸らして唇を尖らせる。
実際、出足は順調なのだ。
ノイマンの手を離れたボウリングの球は真っすぐにピンに向かって転がっていく、ように見える。しかし、それもつかの間ですぐ急旋回と言うが正しいような軌道を描きガーターへと吸い込まれていく。狙っていたとしてもまず不可能な謎軌道だ。にもかかわらず、ノイマンは2ゲーム全てで不思議なガーターを出した。一緒に行った三人とて上手いわけではないが、ノイマンの軌道は異常だった。
「実はそれハロだったり?」
「持ちます?」
「では失礼して……ボウリングの球だな……」
「ハインライン大尉、それに変なエンジン積んであったりしませんか?」
「普通の球だ。持つといい」
「……ですね」
技術者と技術に明るい管制が首を捻るのを横目にアーサーがポツリと呟く。
「ノイマン大尉の操舵みたいだな……」
「バカの軌道ってことですかねぇ?」
「チャンドラ中尉」
「失礼しましたっ!だってお前の操舵バカみたいな軌道じゃん!重力下バレルロールは普通やんねーんだよ!」
「それに関しては僕も同意見だ。ノイマン大尉は気合の一言で済ませたが結局今に至るまでマグダネル中尉は重力下バレルロールのシミュレーションを成功させていない」
「指示した艦長の手柄ですよ」
「例えそうであれあの場にいたのがマグダネル中尉であれば全員すでにMIAだ」
「本番でやったら出来るかもしれないのでなんとも」
やった張本人がそのテンションでは周りは何も言うことは出来ない。言われた本人もそれ以上言うことは出来ないと小さく首を横に振る。
「じゃあ本番に出来るってことで次のゲーム行こうぜ、ノイマン」
「次こそはストライク出してやるから覚悟しておけ」
なお、ノイマンは3ゲームめもオールガーターを出した。