フベラファ/ラファエル夜空を共に観測後、ポトツキの用意したフベルトの部屋で卓上に下書きを広げて観測記録を清書している中に眠ってしまうフベルトさん。その寝言が気になってしまう。その名前の意味とは…
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「ラファエル」
そう呟いた単語に嫉妬してしまう。大天使の名前は貴方と何の関係があるのか。本当は僕の名前を呼ぶのを躊躇って大天使を比喩しているのではないかと考えてしまう。それは自意識過剰だ。僕は愚かな期待を抱く程に貴方に好意を寄せている。年齢差は一回り以上だろう。同じ男。けれどそれをも凌駕してしまう怪獣が棲みついている。恐ろしく愚かな罪深い怪獣が。
「フベルトさん、その名前の意味は何ですか?」
寝言を呟いている貴方の耳元で囁く。寝言でも会話出来るのか試す為に。出来れば他の大天使の名前なら良かったのに。そうすれば僕は愚かな妄想心に駆られなくて済んだのに。意地悪な人。
「その声色で僕の名前を呼んで下さい」
星空の下で
吐息の様に
苦く美しく
抱き締めて
ベッドの中
組み敷いて
体を暴かれ
地球色の瞳
貴方を暴く
現実逃避を
夢見た光景
訪れ知らず
朽ち果てる
「こんなにも辛いのに貴方は気付いてくれない」
数日間の接点で魅了されてしまうのは何故か。きっと貴方は僕にとっての悪魔なのかもしれない。星という材料で甘く囁いて誘なう。知らず知らずに懐へ入り込んで、やがて出口さえ分からない森の中。そこに佇む魂と呼応し怪獣に喰われる。血肉を共有し飽くなき探求の果てを夢見て。子どもは無垢で何色でも染められる。簡単に自身の固定概念を打ち破ってしまう。懐柔された魂はこの場で呼吸する事を望む。下る世界から見える景色で貴方に抱かれる。ひっくり返った空に僕は従順せざるを得なくなる。
「狡い人」
今はどんな言葉も貴方には届きはしないだろう。それで良い。夢の中にいつか入り込んで貴方の魂を侵してやる。強姦などではなく僕という存在を刻ませるんだ。貴方に暴かれた体で魂と交信する。貴方は僕から逃れられないという呪いを込めた言葉を脳に発信するのだ。
「僕から逃れられませんよ?フベルトさん」
夢の住民に呪いの愛を奏でる。
終
2025/02/22