kiis正直俺は、今目の前で起きていることを理解できなかった。ただ食堂に来ただけなのに。
俺の目の前にいるのは人を煽ることを生き甲斐としているような男─ミヒャエル・カイザー。
ソイツが食堂に入ってきたときはつい舌打ちをかましてしまった。端正な顔立ちとサッカーの技術以外は生まれたときに捨ててきたのかと聞きたくなるくらい性格が悪いこの男。またいつものように煽られるんだろうなともはや他人事のように思っていた俺に反して、ソイツは珍しくだんまりしていた。
それに違和感を覚えたのは俺だけではないようで、隣で一緒に食べていた黒名や氷織もその手を止めてしまうほどである。急に静まりかえる食堂に、なんとも言えない緊張感が走る。
「…」
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