二月の丘(島準)I protect it
I save it
I bury it
二月の丘
Shingo and Junta
最近慎吾さんは儚い匂いがする。
最近、と言っても自宅学習期間に入った三年生とはそうしょっちゅう会っているわけもなくて、でも時折学校に顔を出す慎吾さんが(たぶん手続きとか小論の添削とかそういうのだと思う)、その姿を見つけた自分に戯れのように触れるたび、その匂いは香っていた。
その匂いは微かに甘くて、けれど決して長い間鼻先に残っていることなく、去り際見事に、すっと消えてゆく。
まるで一片の花びらのようだ、と準太は思っていた。
別に悲しいわけじゃない。
けれどその香りにほんの一瞬包まれるたび、胸が痛む気がした。
『元気?明後日会える?』
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