春を呪う 背後から呼びかけると、その人物は目を見開いて振り返った。
「ネロ」
「……災難だったな」
恐らく数分前には壁の一部だった砂を、晶の頭から払い退ける。
爆風に含まれていたであろうサラサラとしたそれは、恐らく晶が気が付かぬうちに被ってしまったのだろう。
戸惑いながらも礼を述べた晶は、苦笑しながら頬を掻いた。
「怪我しなくてラッキーだったなって考えようと思います」
「すげえプラス思考」
「スノウとホワイトに実際言われたので」
場所を考えず殺し合いをしていた北の魔法使いは、夜の空に消えた。
時折何かが壊れたような音が響くのは、十中八九彼奴等の仕業だろう。
「今日、ここで寝んの?」
不用意に踏み込みたくはない。
けれど聞かずにはいられなかった。
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