ジェミルク(仮) どこか遠くで子供の泣く声が聞こえた。
それはまるで世界中の悲しみを、小さな一身に背負っているのだといわんばかりに甲高く、一生分の涙を流しているのかと尋ねたくなるほど嗄れていた。
一体どうしたといのだろうか。
俺は泣き止むことのない声を放っておくことができず、腕に力を込め横たえていた身を起こせば、体の上に降りかかっていた石や土たちがパラパラと音を立てて地面へと落ちていった。
不思議なことに、意識が落ちる直前まで身を包んでいた真白なシーツは何処へ消え失せ、代わりに土などで薄く汚れた自分の体を見た俺は、そこで漸く今置かれている状況を思い出した。
ああ、そうだ。ここは戦場で、俺は敵が投げた爆発物に吹き飛ばされ、壁に体を強打し気を失っていたのだと。
3437