mkm_ao
MENU🍞「パンとワインと抱擁と」A5/30ページつきあうことになるまでの🐯と🌸。
幼稚園〜現在までを捏造。
1500〜3500字程度のごく短いお話の詰め合わせ。
書店通販 https://ecs.toranoana.jp/joshi/ec/item/040031142617/
■とある春の約束
薫の、物心がついて最初の春の記憶には、すでに虎次郎の姿がある。
同じ幼稚園へ通うことが決まり、近所だからという理由で連れ立って登園することになった。当然のように、帰り道でも隣を歩く。
「幼稚園、楽しかった?」
母親たちから訊かれる。いろいろと考えてしまって答えあぐねている薫の隣で、虎次郎が「たのしかった!」とはしゃいだ声を上げる。
「まあ、よかった」
虎次郎は薫の手をぎゅっと握ってきた。
「かおるとずっといっしょ、うれしい!」
年少組は2クラスあるのだが、薫と虎次郎は同じクラスに振り分けられたのだ。
虎次郎の掌は、しっとりとして温かい。わざわざ振りほどくこともないか……と思い、家までの道を手を繋いだままで歩いた。跳ねるみたいに歩きながら、隣にいる薫の顔をときどき覗き込んでは、虎次郎が「へへへ」と笑う。
2886薫の、物心がついて最初の春の記憶には、すでに虎次郎の姿がある。
同じ幼稚園へ通うことが決まり、近所だからという理由で連れ立って登園することになった。当然のように、帰り道でも隣を歩く。
「幼稚園、楽しかった?」
母親たちから訊かれる。いろいろと考えてしまって答えあぐねている薫の隣で、虎次郎が「たのしかった!」とはしゃいだ声を上げる。
「まあ、よかった」
虎次郎は薫の手をぎゅっと握ってきた。
「かおるとずっといっしょ、うれしい!」
年少組は2クラスあるのだが、薫と虎次郎は同じクラスに振り分けられたのだ。
虎次郎の掌は、しっとりとして温かい。わざわざ振りほどくこともないか……と思い、家までの道を手を繋いだままで歩いた。跳ねるみたいに歩きながら、隣にいる薫の顔をときどき覗き込んでは、虎次郎が「へへへ」と笑う。