君の声、君の匂いミスタは肩を組むのが好きだ。
元々仲間内では距離も近く、意味もなく叩いたり触れたり、身体的な接触は多い方だ。最初こそ戸惑ったものの、チームとして共に時間を過ごすうちにすっかり慣れてしまっていた。そこには特別な感情はない。フーゴにしても、ブチャラティのもとに来てから数年が経ち、チームの人数が増えるにつれ周りとの距離感には以前よりもずっと寛容になっていた。
ヴェネツィアでの離別を経て、新生パッショーネでのふたりの立場は今までと大きく変わったが、ミスタの接し方は根本的にはさほど変わってないようだった。
「よぉフーゴ、このあとメシ食いに行かねぇ?奢るからよ」
「今夜ですか?特に予定はないけど…」
デスクまでやってきたミスタがフーゴの肩に手を置いた途端に、ふわりと爽やかな香りがフーゴの鼻腔をくすぐった。驚いてミスタの顔を見上げた。
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