「よォ、お坊っちゃん。それ退かすの、手伝うぜ?」
『な…!助力をくれるのは結構だが、成り損ない (冒険者でも傭兵でもない人を馬鹿にする時にそう呼ぶ)に手伝ってもらおうなどとは思っていない』
「……。成り損ないねぇ。元は傭兵だったんだぜ。まァ今や、ンな肩書きも捨てちまったがな」
『ならば口出しは無用。この大岩は、ただの街道を塞ぐものでは無い。神の思し召しなのだ、リーグネル様 (第二王子)に神のお告げがあったのだ!』
「…窮屈な程に胡散臭ェな。オレは神なんぞ信じた事ァねェから、イマイチな…テメェはどう思う」
「…神は尊ぶものです…ですが尊ぶ意志を…押し付ける神は…どこにも…おりません…神は…ただそこに 〈在る〉のです…」
『何を訳の分からぬ…っは!?わ、私の護衛が…!』
「麻痺効果のある…鉤爪です…ああ…ご安心を…死んではおりません…」
『そ、そんな希少な武器、一体どこで…!?』
「どこぞの…今はもう閉鎖した…ダンジョンの…遺物ですよ…」
「オイ、それ炎の化身が暴れ回ってたっつーダンジョンか?」
「…えぇ…人を募るにも…時間が無かったものですから…一人で赴きましたが…あまり手応えは…御座いませんでした…よ…」
「まあ、炎の化身っつってもただの魔力暴発させた妖精だって話だしなァ」
『な、何なんだ、貴様らは!ただの成り損ないではないのか!?』
「…我々は語り部…この大陸を語り繋ぐ…平凡な者ですよ…」
「つー事だ。もう一度言うぞォ。
それ退かすの、手伝うぜ?」
END