全部お見通し「し~がつは花見でぇ~、酒が飲めるぞっと~。
酒が飲める、飲めるぞぉ~。酒が飲めるぞぉ~♪」
と、太宰さんが缶ビールをマイク代わりに上機嫌で歌っていた。歌が終わると同時に彼は僕を半眼で睨みつける。
「……室内だけどね」
「だって、太宰さん。貴方ってば去年の花見で酔い潰した僕を、そのまま置いて帰ったでしょう」
今年で僕は二十二になる。太宰さんと付き合い始めて四年目。太宰さんの扱いにもようやく慣れてきたところだ。
というわけで去年の轍を踏まないように、僕ら二人で同居しているアパートの部屋。そこの卓袱台を挟んで、僕と太宰さんはお酒を飲んでいる。四月の陽気も麗らかな、休日。開いた窓から陽光と微風が入り込んでカーテンを揺らす。
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