文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day26 眼前に現れたのは、白く艶やかな塗装が施された古いジェット機だった。外見だけは美しいその機体は、空を飛ぶ事ができない。尾翼には、アメリカ航空宇宙局のロゴがしっかりと描かれていた。
「綺麗……」
ほう、と感嘆のため息と共に呟くのはフェルマーで。その言葉に吉嗣は楽しげに「だろ?」と笑う。
「この学校が開校されたのと同時に寄贈されてな。宇宙飛行士も使ってたやつだぞ」
「ヴィンを連れて来たって事は、飛ばせるようにしたいって話すか」
「話が早くて助かる」
汐見の問いに大きく頷いた吉嗣に、フェルマーは小さく笑う。
「ボク、ロケットエンジンが専門なんですけど?」
「お前なら航空機のエンジンも頭に入ってるだろ」
艶やかな機体を撫でながら呆れたように笑うフェルマーへ、吉嗣はカラカラと笑いながら言葉を返して。
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