首飾りネタニヤついた同期の褐色の手が、ハンカチ越しに首飾りをつまみ上げていた。明らかに良からぬことを考えていると分かるその顔に、イリヤは呆れてため息を吐く。
イリヤは商家の息子だった。
その商家は、歯ブラシや食器といった日用品類から、シャツや下着、アクセサリーにぬいぐるみ、それから刃物まで取り扱う。
刃物を新調したいから、買物の案内をして欲しい。そういう名目だったのに、主たる目的は別にあったようだ。
刃物の新調は早々に済み、何故か百貨店に来ている。
「それ、常日頃からつけさせるつもり?」
黙ったまま笑う同期ルーシアスは、そうするつもりなのだと悟る。
一粒ダイヤの首飾りは、ごくごくシンプルで、服の下につけていてもほとんど目立たない。
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