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    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

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    まろんじ

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    星の声11

    ##宇奈七

    それからのことは、正直よく覚えていない。
     拠点に戻ったマヴロにコーキノが「あいつは」と尋ねると、マヴロは首を横に振った。
    「二人がいた建物は爆破されて、もうなかった。綺麗さっぱり吹っ飛んだんだろう。クロロスを殺しに来た奴らを道連れにしてな」
     骨の一つも残っちゃいないだろう。
     ──その言葉を聞いた後のことを、自分では何も覚えていない。
     目が覚めると、知らない天井が目に入った。知らない天井、知らない壁、知らない床、知らないベッド。お気が付かれましたか、と白い服の女が俺を覗き込んだ。知らない人間。何も、知らない。知っているものは何一つない。知っているひとも誰一人いない。
     いない、と思った瞬間、胸が鉛を飲んだように重く、苦しくなった。
     ──骨の一つも残っちゃいないだろう。
     いない──いない──いない──。頭の中で、その言葉がいつまでも反響し続けた。奴はいない。アスプロはいない。オルペウスはいない。このクロロスという女の、あるいはアステル・エディプソスの夫になる男はいない。腹の子の父親もいない。
     俺は生まれて初めて、涙を流した。堰を切ったように、いつまでもいつまでも止まらなかった。
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