夢の世界からどこまでも続く青空を写す水面。
ここには私の歩く音しかしない。
それでもこの声は、まだ誰かに届くから。
「目覚めたまま見る夢、」
伸びゆく音が風に流れて、広がってゆく。
空が一段と高くなった。
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『ねぇ、UTAって知ってる?』
小学校で流れる噂話。
辛い時、苦しい時、UTAの歌を歌うとUTAが迎えに来てくれる。
辛い事も、悲しい事も、苦しい事も何にもない世界で、幸せになれる。
そんなおとぎ話。
がしゃん!と鳴る音に頭を抱えて小さなクローゼットで震えた。
外で大人が何人も何人も走り回って、お母さんの泣く声が聞こえて。
それでもわたしは、ここから出られない。
『お願いします!もう、うちには何にも…』
言い終わらないうちにはお母さんの悲鳴が聞こえて、お父さんが呻く。
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