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    aneniwa

    @aneniwa
    マイハン♀ミドリさんの話しかしません

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    aneniwa

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    ツワ夢展示品

    ・お茶点ててるミドリが見たかった。そこから先に全く進まなかった。

    ・ブチ切れてるミドリが見たかった。そこから先に全く進まなかった。

    ・クエスト失敗してむくれてるミドリが見たかった。見たいとこ書いて飽きた。

    ・カッコつけてるミドリが見たかった。あと外出用の普段着が見たかった。途中で飽きた。文末にめっちゃ言い訳ついてるけど寛大な心で許してください。

    【ツワ夢】マイハン♀書きかけ 木のような、墨のような。
     ふくよかな香り。衣摺れの音。湯気と、微かに木炭の熱。
     金属の釜の蓋が擦れる音。釜の内側から微かに、湯の蒸発する音。
     女は柄杓の柄を手放し、それはカコ、と音を立てた。
     茶碗の湯に茶筅を浸し、洗い、和らげ、湯を捨てる。茶杓を取り、棗を取り、芳しい緑の粉末を一匙掬い取る。
     湯を注ぐ。茶筅を取る。シャシャシャ、と小気味良い音が、静かな茶室に響く。攪拌され、きめ細かな泡の立った茶が、畳の上に差し出される。

    「……」

     普段は喧しいとさえ形容される娘だが、今この時ばかりは流石に静かにしていた。それでも、存在感のある女だ。大柄なことも、着物が少々派手なこともあるが、何よりも気配が濃い。滑らかに静かに小さく動いていても、何か視線を向けてしまう。それはこういった場では長所だった。
     全ての所作に淀みがなく、自信が溢れていて、端的に言って好ましい。いつもこうなら良いのに、と、アヤメは心の中で呟く。
     茶の湯は、子供の時分から習わされていたという。茶を立てるのは嫌いではない、とも言っていた。精密に追求され洗練された動作は、美しい。それは狩りの為の鍛錬にも通じるものがある、と。





     狩人は未だ黙秘していた。だが、その、炎の色の瞳が昏く燃え上がるのを、その背にゆらめく紫紺の蜃気楼が立つのを見て、フゲンは咄嗟に立ち上がった。その判断は正解だった。

    「止めんかッ!!」

     大人しく座布団に座して親族の言葉を聞いていたはずの娘は、一拍の後には男に肉薄し、その鍛えた脚を振り上げていた。フゲンが受け止めなければ、彼女の父方の親族、再従兄弟と大叔母だという二人連れの、二つの頭を蹴り抜いていただろう。
     宙に浮いた片脚を掴み上げられた不安定な体勢であっても、娘は僅かも揺らがなかった。その瞳だけがゆらゆらと、怒りに燃え盛っている。

    「……………………里長は、赦すのですか、この薄ら汚い口を。亡き人を、カムラの民を愚弄する口を?」

     フゲンによって押さえつけられている脚に尚も力を込めながら、一音一音区切ってはっきりと、娘は尋ねた。眼前で青褪める親族二人の顔を、路傍の屑石でも見るかのように冷たく見下し、殺気を隠そうともしない。未知の古龍さえ屠る稀代のハンターの、逆鱗をわざわざ撫で上げた男と老女は、恐怖に貫かれ動きの一切を封じられている。
     己に向けられた娘の言葉には応えず、フゲンは二人に視線を向けた。その老いて尚隆々とした腕には血管が浮かび上がり、込められた力の強さを示している。

    「お引き取り願う。これで分かっただろう、そなたらに御せる娘ではない」
    「里長!」

     抗議の声をあげた娘の身体が、ぐら、と傾いだ。力の向きを変えられ、畳に投げ出される。舌打ちしながらも、即座に受け身を取って起き上がろうとするが、光る糸によって絡め取られその動きを止めた。

    「教官!!!!」

     庭側から部屋に入ってきた




    「いるかい愛弟子」
    「いない」

     即座に返ってきた返事に苦笑しながら、中へ踏み込む。愛弟子は奥の簾を全部下ろして布団に潜り込み、不貞寝を決め込んでいるようだった。楕円に盛り上がった掛布団の隙間から黒髪が一条溢れ出ている。薬の匂いに紛れて、微かに血の匂いがした。まだ出血が止まっていないのかもしれない。

    「そっか。いないならじゃあ、このハモンさんお手製の練り切りは、俺が全部食べるしかないね」
    「……」

     もそもそと器用に体勢を変え、布団と簾の両方の隙間からきろりと橙の眼が覗く。練り切りの誘惑には抗えなかったようで、ため息をひとつ吐いて観念し起き上がった。気不味いのを誤魔化すためにか、わざと不機嫌そうな顔を作って乱れた髪を梳いている。

    「お茶勝手に貰うよ」
    「……どーぞ。お湯沸いてるから」
    「君は、薬飲んだかい」
    「まだ」
    「五徳は?」
    「お台所。そっちの端」
    「ああ、あった」

     水瓶の横を指さす手には包帯が巻かれている。反対の腕にも、解いた髪に覆われた肩にも、背中にも。布団に隠れて今は見えないが脚にも巻かれているはずだ。顔もいくらかやったようで、清潔な晒を当てられ半分方覆われて見えなくなっている。つまり全身怪我まみれだった。

     自在鉤に掛けられていた鉄瓶を外し、囲炉裏の灰に五徳の足を埋めて小さな薬缶を上に置く。湯を注ぎ、1回分ごとに小分けにされた薬を放り込んで蓋をする。急須にも茶葉を入れて湯を注いだ。一連の動作を、愛弟子はぼんやり眺めている。
     勝手知ったる人の家、皿やら湯呑みやら用意しているうちに蒸らしは終わる。薬湯が出来上がるのはまだ先で、繋ぎに彼女の分も茶を注いで皿の横に置いた。おいで、と声を掛ければ、億劫そうに寄ってくる。

    「ほら、君のは桔梗だって」
    「……」
    「今度お礼を言うんだよ」
    「……うん」
    「心配してたよ。装備の損傷が酷かったから」
    「……装備のお陰で死なずに済んだわ」
    「うん、そうだね」



    「……叱りに来たんじゃないの」
    「叱られたいのかな」
    「ヤダ」
    「敗因は?」
    「……。……準備不足。弾もだけど、特に携行品。プケプケに乱入されて毒浴びてから一気に体勢が傾いたわ。準備段階でも戦闘中でも、討伐対象以外のモンスターに注意を向けないといけなかった」
    「うん」
    「引き際を完全に見誤ってた。その場にあるもので何とか出来る段階じゃなかった。さっさとキャンプに帰るべきだったのよ。アオイが注意を散らしてくれなかったら撤退も出来なかった」
    「うん」
    「………………………くそぉ」
    「次はどうする?」
    「……麻痺弾持ってくわ」
    「いいね」




     マイハン、遠くから来た友人のハンターが手荷物をスられ、夫の形見の指輪だけは取り戻したいと言うので、探すのを手伝い当たりを付けた店に乗り込むの段
     マイハンとモブしか出てこない! モンハンなのにモンスター出ない! 誰得? 私得!
     マイハンの!! 格好良いとこ見てみたい!!! あソーレ!!!!!


     この店は、内実を良く知っている常連によって成り立っている。店と客双方の口の固さが重要な商売で、つまり少々後ろ暗いことをして金を稼いでいる。
     しかしながら、真っ当に見せかけた店先に一見の客が迷い込むこともあり、そういう者には奥にしまい込んだ危ない品ではなく、店頭に並べた問題のない商品を売って見送った。先程ふらりと現れた女性客にもそうして、適当なものを掴ませて帰らせようと店主は考える。
     ただし、ほんのごく稀にではあるが、初見の客が気前良い常連に化けることも念頭に入れておく。目が肥えて扱いづらいが金払い良く、世間の薄闇を飲み下せる、俗に好事家と呼ばれる人間たち。まあそんな幸運は滅多にない。それよりは、客を装って抜き打ちで来る監査官の方がまだ可能性は高い。どちらにせよ重々気をつけて相手をしなければならない。

     その女はどうやらハンターのようだった。狩りの装備こそ身に付けておらず、普段着だろう着物姿だが、体格や身のこなしでそれと分かる。手には武器によるものだろうタコや、細かい傷痕も散らばっていることからして、間違い無いだろう。
     面倒だな、と店主は揉み手をして相手しながら笑顔の裏で考えた。ハンターは装備やら携行品やらに金の掛かる仕事で、つまりはその他の買い物に手が回らないことが多い。またあちこち忙しなく動き回るので、家を飾ることもあまりしない。何せ都度宿を取るなり野宿するなりして、ひと所に定住しない者までいるのだ。この店の主要なターゲット層である、裕福な農家や商家、貴族たちとは全く違う存在だった。本音を言えばさっさと追い払いたいが、仕事柄腕っ節が強い上にプライドが高くて、有り体に言えば面倒くさい手合が多い。

     贈り物を探しているが、どのようなものを贈るかは決めていないとのことで、しばし店先で話を聞く。相槌をうちながら気付いたことがあり、店主はおやと心の中で呟いた。女の身に付けている帯留に、小さいながらも珊瑚が一粒飾られていたのだ。海から遠いこの地方では高級品。これは大切に扱って然るべき相手かもしれない。もしかすると、もしかするかも。
     通いの女中に合図して、中等程度の茶を淹れさせる。同時に客を座敷に案内して座布団を勧めた。

    「では、家内を呼んで参りましょう。女性に贈るような品に関しては、あれの方が詳しいもので」
    「そう。じゃあお願いするわ」

     素っ気なく言い捨て、女はどっかり座り込み、懐から取り出した扇子で顔を扇ぐ。ここでも商人はおやと思った。精緻な透かし彫りが施された香木の薄板を綴って作られた扇子は、少し昔に裕福な商家の娘の間で流行ったものだ。中古で香りが薄れていてもそこそこに値の張る代物。この客、身体付きや立ち居振る舞いからハンターなのは間違いないが、よほど腕が立つのかかなり羽振りが良い。丁寧に扱って損はないどころか、場合によっては積極的に媚を売るべき相手なのやもしれない。チラリと横目で見たところ、結い上げた黒髪は上等の絹のような艶を誇っているし、飾られた簪も、一見地味なようでいてよくよく見れば手の込んだ彫りが刻まれている。纏う着物も無地ではあるがなかなかに良い素材を用いてある上、全て体格にピタリと合っていて、針目を見るに家庭で縫ったものではなく、仕立て屋で誂えたものだろう。全体的に装飾は少なく色味も控えめでありながら、手間も金も掛けた装いだった。
     そのように様子を窺われることに、その女は慣れている様子だった。見られていることには気付いているようだったが、気にも止めない。興味なさげに飾り棚を眺めながら出された茶を啜り、扇子を使っている。
     大きな買い物にも慣れている、そう店主は読み取った。

    「お待たせを致しました」

     しばらくして奥から出てきた商人の妻は、客の全身をざっと眺めて、(ヘェこれはなかなか、上手くすれば上客を捕まえられるかも)と心中で喜んだ。女の装いに関しては女の方が良く分かる。この客が今日の身支度にどの程度の金額を掛けたかを概算し、それを元に懐具合を予想した後、在庫の中から彼女が好みそうな品物を幾つか掴ませようとホクホク画策した。しかしそれをおくびにも出さずに「おおよそのところは主人から聞き及んでおりますが、今一度、お客様の口からご説明を願えますか」と丁寧に聞く。聞きながら考える、いっそ今日この場での儲けは捨てて気分良く帰らせ、次の来店を狙って囲い込む方が得策ではなかろうか。

    「悪いわねおかみさん、わざわざ呼び立てて」
    「滅相もございません」

     客が探しているのは、世話になった仕事の先輩に贈る品物だということだった。その概要を聞き取り、条件に合いそうな品をいくつか卓に並べていく。それらを挟んで行われるやりとりはごく普通の客と店の会話だったが、おかみは徐々に、微かに身体を強張らせていった。相対する狩人の声音に、時折探るようなものが混ざり始めたからだ。上客候補に巡り合ったと喜んだ当初の興奮が冷め、疑念が脳内を支配していく。というのも、つい先日、ハンターという職業に関係する怪しい荷物を亭主が買い取ってきたので、仕方なく中身を捌いたばかりだった。
     窃盗は元より。盗品をそれと知りながら買い取り、値を付けて店に並べる行為もまた、法による取り締まりの対象である。言い逃れの方法はいくらでも用意してはあったが、ハンターに暴れられては敵わない。どう来るか、どう躱すか、笑顔を絶やさず水晶の彫刻を売り込みながら、予想と対策を繰り返し脳内に描く。


    「ところで、ご主人はこういうのはよく分からないって言ってたけど」
    「ええ、私どもは互いに得意な品物が違うもので。店こそ同じでも、各々で商売をしているようなものでして」
    「そう、そりゃそうか。簪の価値は男の人には分からないものよね。分担するのは確かに名案だわ」
    「ええ、ええ」
    「じゃあ、おかみさんに聞きたいんだけど」

     ソラ来た、と女商人は身構える。

    「指輪。流れてきてない? ここら辺りじゃ珍しいでしょ、噂だけでも聴かないかしら」

     やっぱりあれか、危ない荷にホイホイ飛び付きやがってあのおたんこなすが、と胸中で一頻り連れ合いを罵りながらも、やはりそれを客向けの笑顔の下に隠しきっておかみは言う。

    「指輪でございますか。数は少ないながら幾つかはございますが、例えばどのような」
    「これと同じの」

     示された写真には、指輪を嵌めた女性の手が大きく写しとられていた。予想通り、その指輪の特徴は記憶にあるものと一致する。青い小さな石が、持ち主の動きを邪魔しないために、台の高さを越えないよう埋め込まれている。石の周りを飾る控えめな彫刻もそっくりそのまま同じ。ついこの間亭主が仕入れた荷の中に、大事に大事に仕舞い込まれていた指輪の、その片割れで間違いない。

    「……さて、どうでしたかしら。ちょいと奥を見てまいります、失礼しますよ」

     通常この店ではハンターの荷物は扱わない。ハンターが使うことを前提に作られた携行品は、一般の人間には役に立たないものばかりだからだ。回復薬や解毒薬などはどこでも買えるし、弾や矢などは彼らの武器専用のものなので使い道がない。何かやらかして資格を剥奪されたような、元ハンターの密猟者くらいしか客が付かないので、買い上げた盗品にそれらが紛れていた場合、それ専門の店に売り払っていた。
     しかし、狩りの帰りの荷物であれば話は別だった。人里離れた狩場でしか採取できない素材や、大型モンスターから剥ぎ取られた爪や牙などは、その筋の人間には高値で売れる。権威を財力を誇るため、その身や家を飾り立てたがる輩は、いくらでもいるのだから。




    「ふん、袋ごと買い上げたの? 盗品はバラして売るのがセオリーでしょうに、あのスリ野郎、やっぱり焦ってたのね」
    「!!」

     首元にクナイを突きつけられ震えている女中を突き放し、女は堂々と踏み入った。

    「……お客さん、困りますよこんなところに入ってきちゃあ。そんな危ない物まで持って、エ、何です」
    「あなたは慎重そうだし、旦那さんが買ったのかしら。この商売向いてないんじゃない? 仕入れはおかみさんに任せたら」

    「『指輪さえ戻れば良い』って泣きながら言うのよ、友達が。形見なんですって。あんまり泣くから可哀想でね。おかみさん、これ買うわ」
    「は」
    「私の友情にあなた、いくらの値をつける? 吹っかけてくれていいわよ、口止め料も上乗せしてね」
    「何のつもり」
    「大事になったら面倒なのはこちらも同じよ。その友達、ちょっと訳ありでね。私もこんなところに出入りしたのバレたら大目玉食らうの。拳骨じゃ済まないわ」

     それを聞いて、狼狽える亭主を押し退け、おかみは一歩踏み出した。

    「お互いさま、というわけで」

     水商売あがりのこのおかみ、客の機嫌取りが上手いだけでなく、肝が据わっているし場数も踏んでいる。そもそもが商人というのは、相手の弱みを突っついてなんぼの職業だ。こんな商売では尚更で、特に仕入れの際は、徹底的に相手の足元を見るのが鉄則というもの。


    「そういうこと。さ、いくら?」
    「……」

     おかみは少し迷った。これはこの女を信用するかどうか、という話だ。こちらはまだこれが盗品だと認めた訳ではないが、元の持ち主に出てこられては言い逃れし難い。盗品だと判明した上で然るべき筋に通報されでもすれば店はお仕舞い、これまでの稼ぎが無駄になるどころか、夫婦纏めてひっ括られる。

    「……お名前をお伺いしておりませんでした」

     所属を問うおかみに、女狩人は自信ありげな笑顔のまま返す。

    「それは難しいわね。お互い困ることになるわよ」

     口では断りながら、狩人はさりげなく羽織の裾を捌いた。チラリと一瞬見えた帯の横手に染め抜いてあるのは手裏剣の紋で、カムラの里の者だとそれで知れる。
     なるほど、表沙汰にできない訳だ。この女、『カムラの英雄』と仰々しく讃えられるハンターで間違いない。確か名前は、ミドリとか言ったか。

     どうやら、こういうことのようだった――これまでの自分たちの慎重な商いが功を奏し、この店の不法行為の証拠を挙げられなかったらしい。唯一例外となり得る指輪も、元の持ち主本人が盗品だと証明出来なければ証拠とはならない。そしてその持ち主は何らかの理由で動けないようだ。それでこの女狩人が出張ってきたが、警備に関わる身であることから表沙汰にすることは出来ない。そしてどうやらこの女、気が短い。たどり着いた結論が『指輪の在処を突き止め、財力に物を言わせ買い上げる』というものだったらしい。
     商人とは相手の弱味をつついてなんぼの仕事。しかしその上で必要以上の恨みを買わないよう立ち回らなければならない。顔を見た時概算したこの女の懐具合と照らし合わせ、“少々の痛手”で済む程度の額で済まさなければ。

    「……で如何でございましょ」

     おかみが口にした金額に、亭主は目を剥いた。彼が心中で考えた額の、凡そ3倍の値段だったからだ。彼等と違い真っ当に生きる商人がひと月に稼ぐ額の、その倍ほどの金額になる。

    「異論ないわ。ちなみにモノで何割?」
    「五割でございます」
    「やるぅ」

     傲岸な態度を崩さず、鼻で笑って女は札入れを取り出した。カムラの紋が染め抜いてあるそれを投げ出し、髪から簪を引き抜いて放る。透かし彫りの扇子と、珊瑚の帯留めを外し、象嵌の印籠も取り出して机に置いた。絢爛たる品々を見回して片目を眇め、螺鈿の手鏡を追加する。

    「大体は古物商で買ったから、足は着かないわよ」

     いつの間にか取り出した算盤をパチパチと弾いて、おかみは頷いた。

    「では、こちらはお客様のものでございます」



    「ミドリ」
    「あったわよシズ、指輪」
    「!!!! ………ありがとう、本当にありがとう!」
    「もう失くすんじゃないわよ、結構骨を折ったんだから。手形は?」
    「弟が届けてくれたの。昨日着いたわ」
    「そ。じゃあこれごと提出しましょうか」






     ・友達はうっかり通行手形を持たずにこの地方に入ってしまい、しかもそれに気づかないまま狩りを行なってしまった。正式な資格を持っているとはいえ密猟と看做されかねない、というかほぼ黒のグレー。荷物の中の素材が売られてしまったのは証拠隠滅の手間が省けてむしろ助かるが、指輪だけは取り戻したかった。
     ついでに手形はスられた荷物の中に入っていることにして時間を稼ぎ、その間に家族に持ってきてもらって「無事取り戻せました」と提出。なんとか丸く収まった。
     ・ミドリは里の警備にも関わっているので、盗品を扱う店にそれと分かっていながら入り、あまつさえ買い物をするというのは結構な問題になる。ちなみに各所にいるアイルーの密偵が告げ口したのでコガラシ(警備部のトップ)にバレたが、事情を知って「今回だけでござる」と見逃してくれた。
     ・友達の手前見栄を張り「軽いモンよ」と豪語していたが、しばらく買い物出来ない程度には痛い出費だった。仲間内での株は上がったがそれだけ。
     ・この店は2年ほど後、別件でボロを出してしょっ引かれる。在庫の競売にミドリはうきうき出かけていき、以前自分のものだった小物たちの他、目を付けていた装身具を何点か競り落としてほくほく帰ってきた。





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