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    すずめ

    かべうち絵日記練習帳
    リアクションでかまってくださったかた、ありがとうございます

    (すき → ほもとゆりと女体化とろりしょた)

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    すずめ

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    これもなんとなく晒しちゃう
    いつぞやのスレミク(https://poipiku.com/150116/2641897.html)を漫画にしようとしてくじけて文章で……ってなってこれだけ進めて忙しくてやはりやさぐれてしまった、冒頭も冒頭の冒頭

    ##文

    ◆スレイを探す、とある天族の話。




    目覚めた。


    そう、目覚めた。それだけがはじめの意識だった。ここがどこかはわからない。少し視線を動かすと、あちこち崩れた天井のむこうで、澄んだ青が高く見下ろしている。空だ。しかも昼の、晴れた空。なんだかそれにひどくほっとして、ほう、と息をつく。数回瞬いた。見える。問題ない。自分の意志で視界を動かせる。途方もないことだった。――――? そうかな。途方もないことだったかな。だって、見えるってそういうものではなかったろうか。青空があって、それを見ることができて、そんなのって、珍しかったっけ? わからないなあ。でも。でも。でも。



    背を起こそうとする。
    そういうものだと言わんばかりに、体が無意識にそうしようとした。
    が、阻まれた。ぐぇ、と首元がなにかに引っぱられる。
    わからないので、首を傾げた。耳元でなにかがふさりと揺れる。
    引っぱられた気がしたのだけれど、周囲に自分以外がいる気配はとんとない。
    では何が原因で起き上がれなかったのだろうか。
    右を向く。
    左を向く。
    寝そべっているのは地面だ。
    地面には天井からの落下物や、壁から剥離した装飾物がぼろぼろと散らばっていた。
    なんだか勿体ないなあと漠然と感じる。
    問題なく動く腕で、寝転ぶ自分の頭上を恐る恐る探ってみると、冷たい、それなりの大きさの石が転がっているようだった。
    その石の、地面との接地箇所が、布を噛んでいる。
    辿ればそれは自分の首元へつながっていて、要は身につけている服の一部が岩に捕まっていると、そういうことらしい。
    仰向けのこの体勢から、岩下の服を引き抜いてみせるのは、至極難しい仕事に思えた。
    もだもだともがいて、服から首を抜くことでどうにか背を起こす。
    振り向いた。
    白い――――……元は、そんな色だったのだろう。
    埃に薄汚れて、端はほつれて、傷んでいる。そんな布切れがそこにあった。
    模様も刻まれているようだけど、なにを象っているのかの判別はつかない。
    一応持ち物だったのだからと引っ張り出そうとしてみたが、途端、びりびりと裂けて千切れて、服と称すにはあんまりの惨状となってしまった。
    仕方ない。
    もうこれは、ここに置いていくより他なさそうだ。
    置いていく。
    うん、置いていくのだ。
    置いていくということは、ええと、移動するということだ。
    では、ここは自分の居場所ではないということで、じゃあなんで。


    「ここにいたんだろ……?」


    とりあえず、立ち上がってみた。
    なんだかふらついて、しりもちをつく。
    痛かった。
    そっか、痛いんだ。痛いってこんなだった? わざわざ、思い返すようなことだったろうか。
    思考はとりとめない川のようだった。
    考える――というより、思うということが、すごく久しいような、新鮮なような。
    もう一度、慎重に立ち上がる。
    踏みしめる。
    今度は問題なかった。
    身につけている服も、先ほどだめにしてしまった白い上着よりは傷んでいない。
    軽く引っ張ってみたが、裂けることもなかった。

    一歩踏み出す。
    二歩歩き出す。
    三歩進み出せば、ためらいはなかった。

    どこかはわからない。
    なんのためかもわからない。
    どこへ、行けばいいのかすら。
    それでも、なんだか大丈夫な気がしたのだ。
    だって、見下ろす空は、あんなに澄んでいたから。
    あんな青ならきっと、きっと、明日はきっと大丈夫だ。

    小さな隙間から照らされた部屋は、そうしてそっと無音となった。




    逸る足。
    耳にふわふわと揺れるのは、羽飾りらしい。
    指になじむ手触りが心地いい。
    それは懐かしさというものだと、誰も教えてくれないので、彼はただただ空を求めて前へ進む。






    かつて神殿と呼ばれた場所があった。
    魔物の巣窟となって、人の手の及ばない場所があった。
    大昔と評して差し支えないほど時間が経って、廃墟と評して差し支えないほど崩れた建物があって。
    その詳らかを知るものは、声を大になどしなかったから。
    危険な噂だけが伝説となって今も残り、それゆえに、信仰の寄る辺だったとは最早誰も知らず、いま、巡礼の足音は一つもない。

    年月をかけ、緑に呑まれ。
    瓦礫のその隙間から、這い出るように顔を出したその人を。
    柔い風と、草と、鳥の声と、ただただ広がる空に、理由もわからず泣いた誰かがいたことを。

    世界以外、誰も知らない。









    ええ、ええ。
    もう、いくらでも逗留していただいていいんですよ。
    なんたって命の恩人だ!
    あのとき折よくベアーを遠ざけてくれなかったら、足の捻挫だけじゃあすまなかった。
    ヘタすりゃあお陀仏です。
    それに、貴方さまはあれでしょう?
    天族さまでしょう?
    見ましたよ、こう、雷をびりびりーって操って!
    雨雲の中で鳴るには恐ろしいが、あんなに鮮やかにお使いになられると、ただただ見惚れるもんですなあ。
    綺麗なものを見せていただきましたよ。
    それに、なんの理由もなくったって、天族さまには敬意と感謝で迎えるのが、この大陸に住まうものの理です。
    そういった信仰が天族さまのお力になって、そのお力で各地の導師さまが世界の穢れを浄化してくださって、気持ちよく明日を生きられるんだ。
    親の親のそのまた親の爺さんの爺さんのころから、寝物語で飽きるほど聞いたもんです。
    信仰を蔑ろにして、天族さまのお力が弱まって、心を通わせる導師さまもめったに現れなかった災厄の時代があったってね。
    二度とあれを起こしてはいけない。
    かの伝説の導師さまのご尽力で、少しずつよくなった世界を、守らなければいけないよって。
    ……にしたって、その災厄のころはなにもかも穢れていたせいで天族さまが見えない罰当たりな人間がたくさんいたんだぞ~なんて脅されても、笑っちまいますよねえ。
    そんなわけあるかって。
    子供に聞かせる物語なんざ、得てして大げさなもんですが、それにしたって大げさすぎるってもんでしょう。
    田舎もんの俺だって、こんなにはっきり会話できるってのに……え? ご存じない?
    かつての災厄やら、天族さまや導師さまのご尽力を?
    …………、あるんかね、そんなこと。
    いや…………いやいやいや!
    まさか、でも、しかし……もしや……あの、天族さま、時に、お名前は?
    …………お生まれは?
    ……、なんにも、覚えてない?
    あっちの廃墟で……、昨日眼が覚めたばかり。

    ふえええええええ!!!!!

    えっ、まっ、ほんとに! ふわああああああ!!!!


    カミさん! ちょっとガキつれてこっちこい!!! 無垢の! 御目覚めになられたばかりの!!! 無垢の天族さまが!!!!!



    * * * * *
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    「変わらずどんくさいな、茅ヶ崎」

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    「先輩、これ見てください」
    「近すぎて見えない」

     華やかなネイルアートで彩られた指からスマホを取り上げ、画面に視線を落とす。それとほぼ、同時に茅ヶ崎が見出しを読み上げた。

    「佐久間咲也、お泊まり愛♡ですって。そのアイドルの子、先輩の推しですよね」

     下品な煽り文句に顔をしかめ、悪意にまみれた文章を斜め読みしながら、スワイプするとスキャンダルの証拠と思わしき写真が現れた。撮影された場所自体が暗く不鮮明だが、確かに男女と思わしき体格差の二人が降りてマンションのエントランスに 1085