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    ma_wata776

    @ma_wata776
    【pkmn⚔️🛡️】 ホプユウ ダンソニ ネズマリ キバヌメ
    【pkmn LA】ウォロショウ
    【pkmn sv】ペパアオ
    【MH らいず】ウツハン♀
    二次創作
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    年齢制限がかかりそうなもの
    なんだかよく分からないもの
    ありまぁす!!

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    ma_wata776

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    没ほゆのてんのとこ なむなむ~

    困った。
    試合後の会見が近いのに、チャンピオンが戻らない。
    もしかしてまだ控室だろうか。先程確認した時は、鍵が閉まっていたので居ないと思っていたのだが。
    控室へと走る。アップに使うサブのフィールドや、スタジアム内のポケモンセンター出張所も探したので、ここが駄目ならもう心当たりはない。スマホロトムも通じないし、一体どこへ行ったのだろう。
    チャンピオン専用の控室があるフロアはその他には何も入っていない。事後処理に追われるスタッフもいない静かな通路を、注意深く見渡しながら歩いて行くと、突き当りに男性の背中が見えた。
    黒いシャツにスキニーパンツ。先程も見た、褐色に藤色。
    あれは、

    「ホップ選手?」
    「ぎくっ」

    驚いた擬音を口から出したぞこの人。
    ギギギと錆びた音が出そうな素振りで、ホップ選手が振り返る。

    「お疲れ様です。先程は驚きました。帰国されてらっしゃったんですね!今日のトーナメントにも出場してくださったら良かったのに、」
    「わああ!しー!!しーだぞしー!」

    わたわたと焦った様子のホップ選手が、左手で人差し指を立て口元に当てる。
    いや貴方の方が声大きいですけど。思いつつも一旦口をつぐむと、ホップ選手は右手元にちらと目をやり、ほっと息を吐いて脱力した。

    「……すみません」
    「あーいや……今日はたまたま所用があって帰って来たんだぞ。済んだらすぐ戻るつもりだったから」
    「そうでしたか……残念です。あ、チャンピオンどこにいるかご存知ですか?もうすぐ記者会見なんですが見当たらなくて……」
    「う」

    あからさまにホップ選手の笑顔が引きつった。前で荷物を抱える手に力が込もったのが分かる。
    結構大きな荷物だ。真っ白い布に包まれたそれを抱きしめるように抱えている。何かの機材だろうか。
    少し首を傾けて覗くと、もぞもぞと布が動いた。
    え。ホップ選手の肩越しに、布の隙間からこちらを覗く青い瞳が見える。
    え。それをすぐに褐色の手が遮った。

    「……今のは」
    「……」
    「……チャンピオン?」
    「……」
    「はぁい」

    くぐもった可愛らしい声で布がしゃべった。よく見ると布の端からユニフォームタイツの足が生えている。
    ホップ選手を見ると、なんとも微妙な愛想笑いを浮かべていた。
    もはや顔に不味いと書いてある。

    「……どうしたんですかそれ」
    「……これはさっきやっと捕まえたポケモンで……」
    「いやチャンピオンですよね。返事しましたよ今」
    「いやいや、ユウリじゃないぞ。ユウリはもうあの、帰ったから」
    「チャンピオン!そこにいますよね!」
    「違うって!」
    「はぁい、んぐ」

    ホップ選手が布の口元を押さえた。布の口ってなんだ。
    冷や汗を流しながらも、謎に自信がありげな笑みを浮かべこちらをみて頷いている。
    勢いで乗り切る気だ。
    ふざけてる場合じゃないぞ。何をしたいのか分からないが、会見の時間は迫っている。
    もうこのまま会場までついて来てもらおうか。

    「会見はAホールで行います。私について来てください」
    「……会見はパスするぞ」
    「え?何言ってるんですか。もう報道陣も入ってますし……」
    「コイツ今具合悪いから。これ以上無理させられない」
    「……え」
    「だいじょうぶだよ」

    ごそごそ出口を探して、布からチャンピオンが顔を出す。
    にこりとこちらに向かっていつものように微笑むと、そのままホップ選手を見る。

    「大丈夫じゃないぞ」
    「へいきだよ」
    「平気じゃない。オマエ一昨日のエキシビジョンもキツかっただろ。中継観てたんだからな」
    「……」
    「この分だと、もっと前から悪かったんじゃないか?最近電話じゃなくてメッセージばっかだから、おかしいなと思ってたんだぞ」
    「……」

    ホップ選手から笑顔が消えた。
    怒ったような、呆れたような。冷えた金色がチャンピオンに向けられている。
    怯まず尚も微笑みをたたえる彼女は、特段変わったところはないように見えるが。
    試合前のメディカルチェックや諸検査でも、問題があったという話は聞いていない。

    「よくも当面の公式戦はない、なんて嘘ついてくれたな」
    「……ホップが観ると思ったから」
    「観るぞ。当たり前だろ。観られたら不味いって分かってたのか?」
    「……」
    「オレが大学をほっぽりだして、慌てて帰ってくるとでも?」
    「……」
    「大当たりだぞ。流石だな」
    「……ホップ、学校はだいじょうぶ?」
    「……は。……あのなあ、」

    「オマエがそうやってオレを心配するように、オレもオマエを心配するって分かんないのかよ!!」

    通路に張り上げた声が響いた。思わずびくりと肩が跳ねる。
    同じく驚いたらしいチャンピオンから微笑みが消えた。
    先程スタジアムでホップ選手を見つけた時と同じく、大きな瞳が更に丸く開かれ、不安げに揺れる。
    その様子を見て、ホップ選手は苦虫を噛み潰したかのような顔をしながら、続けて言いかけた言葉を飲み込んだ。
    息を吐く。そして瞳を閉じてから、ゆっくりともう一度開く。
    凪いだ金色が、チャンピオンを見つめた。
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