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    れんこん

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    れんこん

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    フェイスを好きになった女の子とビリーのお話

    #フェイビリ
    phobility

    ふんわりとやわらかく閉じられた瞼のその先に、長く繊細なまつ毛がかかって、綺麗な影を作っている。整った形をした眉毛が少し緩んで、なんとなくあどけない印象。……普段はずっと大人っぽくてセクシーなのに、今は年相応の同級生の男の子の顔をしている。半開きの唇は眠っていても尚色っぽく、見ているだけでドキドキとする。
    さわやかな風がその艶やかな黒髪を撫でて、さらりと靡くのがまた彼の持つ格好良さを引き立てる。

    いつも落ち着いて読書をするために選んでいるなんてことない木陰が、今だけ王宮の一角かと錯覚してしまうくらい。その黒髪の王子様はとてもきれいに眠っていた。

    きれいなのに甘やかで可愛らしさ格好よさも全てがそこにあって、全てに目を奪われる。
    永遠に時が過ぎなければいいと初めて思った。ずっとこのまま見ていたいと。

    そう思った矢先に、重たい瞼がゆっくりと開かれて、その色っぽいピンクトルマリンの瞳が外に晒された。特徴的な下まつ毛は艶やかで、気怠げで、でも可愛らしい。
    見ていたのを気付かれないように慌てて本を目の前に持っていく。

    彼は気付いてないのか、くぁ、と小さくあくびをして立ち上がる。その所作すら高級な猫のようで、きゅんと胸が締め付けられる。
    ……あぁ、行ってしまうのかしら。
    本の影ではぁ、と小さく溜息をつく。


    「 DJお目覚め?」
    「んん……、まだちょっと眠い。……ていうか眠く無いの?」
    「俺っちちょっとの睡眠でも大丈夫なタイプだから〜。」

    低く艶っぽいあの子の声と同時に突然聞き覚えのない特徴的な癖のある声。なんとなく不思議な感じがして本から少し顔を上げてそちらを見てみると同じ制服を着た男の子がいつのまにか彼の隣にいた。彼と対照的に軽薄そうに見える明るい髪色。体格は少しだけ彼より細身で、何よりもの印象はその顔の中心のふざけたオレンジ色のグラスのゴーグル。
    変な子、というのがまず最初の印象だった。
    背格好は大幅には変わらないのに、大人っぽい彼とは反対で動きも輪郭さえもなんとなく子供っぽい。

    「アハ、そのゴーグルの下で寝てても誰も気付かないだけじゃないの?」
    「えぇ〜、ちゃんとDJが眠り姫になってるのを見守ってたヨ〜?」
    「なにそれ。キミは悪い魔法使いかなんか?」
    「YES!俺っち魔法使い!」

    目の前で突然小さな花がぽんぽんとそのゴーグルの子の、手袋から溢れ出る。……すごい、派手なマジックだ。
    この2人、似合わないのに何故か会話は慣れたような空気のそれで、なんもなく違和感。彼はいつだって女の子に囲まれているけれど、こんなに砕けた意地悪そうな笑い方をするのは初めて見た気がしてちょっとだけドキリとした。
    ……と、突然なにか視線を感じて背筋がぞくりとする。
    周りにはこの2人以外居なかったはず……、誰かの気配も無かった。彼は今やそのゴーグルの子へ目線を向けていて……あぁ、ともすればその目線はもしかして。

    「……俺はそろそろ行くけど、ビリーはどうする?」
    「ン〜?オイラちょ〜っと用事があるから今日はここでお別れだネ。」
    「そ、いつもの仕事?」
    「さっすがベスティ♪そんなトコ♡」
    「また遅くなると寮長に叱られるから程々にね。」
    「えぇ、それDJが言っちゃう〜?DJも夜遊び程々にネ!」
    「はいはいっと〜。じゃあね。」

    慣れたように交わされる会話の軽快なこと。
    「ベスティ」って……、あの2人が?似合わない。女の子と居るのを見ているよりは良いけれど、あの子の隣に並ぶにはなにもかも劣ってる。
    ……やっぱりもう少しああやって絵のようにひとり眠る彼をもっと見ていたかった。

    そして、本の裏に隠れて2人が居なくなるのを待っていようとしたら、突然視界が開けた。



    「HELLO!本の妖精さん……いや、眠りの森の王子様⭐︎」

    !?

    思わず声を出して後ずさる。
    音もなく本を取り上げられて、目前にはオレンジ色のゴーグル。そして、視線。
    先程感じたソレと同じもの……。
    至近距離だと反射してよく見えなかった瞳が薄らと透ける。グリーンの瞳。

    「はじめまして、俺っちはキミの隣のクラスのビリー・ワイズ!便利屋をやってマス!」

    驚きのまま何も出来ないままいると、即座に捲し立てられて面食らう。なんなのこのひと。
    無視して逃げてしまおうと立ち上がろうとすると、手を取られて逆に起こしてもらうことになってしまった。なんなの。

    「NO NO!そんなに警戒しないでもダイジョーブ!俺っち別に本当の悪い魔法使いじゃないヨ?……それより、キミ、フェイス・ビームスに興味があるんでしょ?」

    !!

    明らかに怪しい風貌に怪しいセリフ。これだけなら振り払って逃げていた所だったけれど、続けて出てきた言葉に、私は動けなくされてしまった。
    最近毎日のように私の脳内を占めている想い人の名前。……私の王子様。
    彼と仲良しなのだと名乗るその胡散臭い魔法使いに誘われて私は自らその真っ黒な手袋をぐっと掴んだ。




    *****



    いつも聞いている音楽、好きなお洋服のブランド、行きつけのショコラのお店。
    沢山の彼の「一部」を教えてもらう。
    マリーゴールドの髪色の魔法使いはいつだって欲しい情報を持ってきてくれたり、プレゼントを渡すキッカケを作ってくれたりいろいろ動いてくれる。ささやかなコインと引き換えに。

    彼がよく現れるというイエローウエストの街並みを歩いていると、目当ての想い人が現れる。
    相変わらず麗しい目元に、形のいい唇……。
    ……そしてその隣には例のあの子。
    いつもなにかと楽しそうにるんるんと跳ねるようにして彼の隣を歩く。
    慌てて見つからないように物陰に隠れてスマホを弄るフリをする。
    どうやら、近場の学生向けの安価で大盛りのレストランで食事をしてきた所らしい。……上品な素振りの彼もこんな砕けた所に入るのか、その情報はまだ聞いた事無かったのに。

    「あ〜美味しかった!DJ、お口直しにキャンディいらない?」
    「ガムの方がいいな、甘くないやつ。」
    「OK OK!はい、お好みの味をお選びくださいお客様〜♪」

    また、魔法。
    先程まで何も無かった掌には数種類のガムが並び、そして挙げ句の果てには「コレがイチオシ⭐︎」と言いながらいつのまにか彼の胸ポケットに入っていたソレを、少し驚いた顔した彼に渡してみせた。
    やれやれ、なんて言いたげな顔をしてそれを受け取り口に含む彼はなんとなく楽しそうで。
    いつもの色っぽさは逆に消え失せ、年相応の男の子らしい……その少し緩んだ笑顔にきゅ、と胸がしめつけられた。

    ずるい。
    その笑顔が、欲しいと思ってしまった。






    それから私は以前にも増して何かとあの子を呼んだ。
    最早、「お得意様」と呼ばれるほどに。
    彼の情報は余すことなく新しいものが入ったらすぐ手に入れて、それで、目の前の貴方のことも教えてほしいと強請った。
    ただ情報を集めるだけにあの人の隣にいるだけのはずの貴方が、1番私のみたい彼の顔を引き出して見せるのだから。
    悔しくて、そして羨ましくて、そうなりたいと願った。
    ほんの少しだけ髪の毛を明るくして、アイメイクは少しだけぱっちり目に。大人っぽい香水から、子供っぽいキャンディみたいな香りのそれに。

    「おやぁ〜?キミはDJに首ったけのはずだったのに、俺っちに鞍替えしちゃったの?えぇ〜、ボクちん罪なオトコ〜⭐︎」

    わざとらしく茶化されて、わかりやすく腹を立てて見せても、まぁまぁと宥められて、その掌から突然出てきた甘いキャンディを取らされる。
    こんなやり取りも何度目かわからない。
    毎度さらりとかわされて、なんてことない日常会話が続く。その会話の中で彼のことを探ってみても、彼が好きなものがキャンディとガムであるということと、授業をサボりがちなことと、悪戯好きなことくらいしかわからなかった。
    悔しい。別れ際に今度こそはあなたのこともっと突き止めてやるんだから、と言うと八重歯を携えた口元がにぃ、と吊り上がってまた幼さが目立った。






    *****




    「……ねぇ、ビリー……あの子。気付いてるでしょ?」
    「ンン〜?なんのコト?ボクちんわかんない〜。」
    「……まぁ言いたくなければ言わなくても良いけど。」
    「んっ…、やぁだ、ソコ、」
    「嘘。」

    ちゅ、と耳の後ろにわざとらしいキスを落とされて、戯れるように触れられる。話を逸らしたのに若干拗ねた様子。きっと女の子を抱く時、こうして甘えるようにして絆していくんだろう。いつもベッドを共にする時にこんなわざとらしい真似はしない。
    ……まぁ、今回ばかりは絆されてあげないけどネ。それを恨むような仲でも無いし、わかってるからこそこうしてただ戯れるだけに留まる。

    「……悪い男。」
    「えぇ〜?それDJが言っちゃう??」
    「アハ、それもそうだね。」

    さすがベスティ、よくわかってる。
    いつもの言葉をまた唱えて、戯れに応えるように腕を回す。これは後腐れのないただのお遊び。

    もう。
    素直にDJに向かってくれたらあの子は今こうしてDJの腕に抱かれてたかもしれないのに。
    俺っちは懐があったかくなるし、あの子は好きな人と付き合えて、DJはまぁいつも通り。それでWIN-WINのはずだったのに?

    「DJのお仕事承るならともかく、ただ遠ざけるって割に合わないんだよネ〜。」
    「付き合ってあげるつもりははなっから無いんだ?結構かわいかったけど?」
    「オレはDJとは違うからネ♡」
    「散々ベスティだなんだ似たもの同士だっていう癖に今そんなこと言うんだ。」

    つんつんと脇腹を突かれて、くすぐったくてやめてって言うと、意地悪なベスティは嬉しそうにした。
    元はと言えばDJの情報を売りつけるのが目的だったのに、途中から彼女は自分を求めるようになった。最初はこの「フェイス・ビームスの隣」というポジションへの憧れだったはずが……。
    先日聞かされた好意を伝える言葉には誤魔化して聞こえないフリをした。
    ……だってお金にならないでしょ?

    「……キミの瞳、グリーンだって言ってたね?」
    「え、DJ聞いてた?」
    「よく本を読んでたからかな、詩的な子だったよね……アハ、エメラルドグリーンの瞳が綺麗だって…このビリーに?ん、ふふ……。」
    「あー!?笑ったな〜?」

    いつもあまり興味なさそうにしているのに、なんだかんだ人をよく見ているし……今回ばかりは好奇心かなんなのか、やたらと噛み付いてくる。
    するりとDJの手が頬を撫でていき、目元を親指が掠って……その顔に浮かぶのは悦に入った表情。

    「ブルーサファイア。」
    「ん?」
    「アハ、なんでもないよ。」

    せっかく一度クールダウンして衣服を着なおしたというのに、また剥ぎ取られそうになって、今日また仲良く夜更かしは覚悟した。
    ……ほら、そしてまたきっとキミは眠り姫になっていろんな娘を引っ掛けてしまうんだろうネ。

    告白をさらりと流した際にあの子に言われた呼び名を脳内で繰り返して、タダで親友の腕に抱かれた。
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    れんこん

    DONE第12回ベスティ♡ワンドロ、ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    ほんのりシリアス風味
    目の前にひょこひょこと動く、先日見かけた忌々しいうさ耳。
    今日は見慣れない明るく所々にリボンがついた装束に身を包み、機嫌が良さそうに馴染まないタワーの廊下を跳ねていた。
    眩しいオレンジ頭に、ピンと立ったうさ耳はまだいいが、衣装に合わせたのか謎にピンク色に煌めくゴーグルはそのかわいらしさには若干不似合いのように思えた。胡散臭い。そういう表現がぴったりの装いだ。

    「……イースターリーグはもう終わったよね?」

    後ろから声をかけると、ふりふりと歩くたびに揺れるちまっとした尻尾が止まって、浮かれた様子のエンターテイナーはくるりと大袈裟に回って、ブーツのかかとをちょこんと床に打ち付けて見せた。

    「ハローベスティ♡なになに、どこかに用事?」
    「それはこっちの台詞。……そんな格好してどこに行くの?もうその頭の上のやつはあまり見たくないんだけど。」
    「HAHAHA〜♪しっかりオイラもDJのうさ耳つけて戦う姿バッチリ♡抑えさせてもらったヨ〜♪ノリノリうさ耳DJビームス♡」

    おかげで懐があったかい、なんて失言をして、おっと!とわざとらしく口元を抑えて見せる姿は若干腹立たしい。……まぁ今更だからもうわ 3591

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