【獄都二次】清兵衛杉と庄兵衛杉<後編>1
本堂と門を施錠し、スーパーの割引シールがついた弁当を漁りに行こうとしたところを、居酒屋じみた大衆食堂へ足を伸ばす。いつも寺務所で書類の整理ばかりしていたが、今日は強面の来訪者の相手をしたために疲労困憊だ。それにあと二週間は曰くつきの寺での住み込み番の生活が続く。たまには役場のジャケットを脱いで、羽目をはずしたところで罰は当たらないだろう。定食を肴に熱燗一合をちびちび飲んで、心地良いほろ酔い気分で寺に戻る。そんなに悪いことではないはずだ。
応宗寺へ至る石段を前に、青年の足が竦む。酒で火照っていた身体が急速に冷えて、頭から冷や水を被ったかのように酔いが冷めた。町に点々と佇む街灯の延長で、石段の途中にも灯りがふたつ設置されている。日照時間に応じて自動点灯するはずのそれが点いていない。風で消えたのだろうか。石段の上からごうごうと風の音が聞こえる。
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