ワンドロ「添い寝」ヒュンケルはたまに、古傷由来の熱を出す。
そういうときは、野宿ではなく宿を取る。
「謝るのは禁止だ」
目を覚まして何か言おうとする気配を察して先手を打つ。案の定、図星を突かれたために目を白黒させている。…ちょっと可愛い。
「しかし」
「急ぐ旅なら別だが、当てがない…というより当て自体を探す旅だ。お前で足止めを食う事が必ずしもマイナスだとは限らん。」
それでも納得しかねるようなので、少し趣向を変えてみる。
「…まあ、自分から飛び出した手前恰好がつかんという気持ちはわからんでもない」
意地悪い視線で見やってみればわかりやすくぐうっという顔で呻いている。
「心配しなくてもいつも通りしっかり看護してやる。覚悟するがいい」
耳まで赤くなって顔をそむける様をニヤニヤして見てしまったのは不可抗力だ。
ほどなくして、ヒュンケルは眠りについた。
ひと眠りすれば普通に歩けるようになるだろう。
一安心したので俺は介護の代金を貰う。額に触れ、頬に触れ、それから同じ寝床に入って、その寝顔を堪能するのだ。髪をなでながら、この「戦士」がこのような事を許している事実についつい顔がほころんでしまう。
そう、お前を助けていることで、俺は助けられている。お前の存在が俺をこの世界に留めてくれる。
荷物だと嘆くお前のその存在の重さを、俺は必要としている。
それを適切に伝えるにはどうしたらいいのだろう?
そう思案しながら、共に眠りに落ちるひとときが、とても幸福なのだ。