文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day28 冷え切ったガラス瓶には水滴が流れ、アルミ製のスクリューを回せば金属が離れるパキリという音と共に炭酸が空気へと溶ける爽やかな音が小さく響いた。
「雪どけサイダー?」
寮から職員宿舎に居を移してからは、広い部屋を充てがわれた空閑と汐見が暮らす部屋に集まることが多くなっていた。リビングとして使っている部屋でダイニングテーブルを囲みながら瓶を手にしたまま不思議そうに首を傾げた汐見に、篠原が頷く。「あぁ。俺この間ちょっと帰省したろ、その土産」と重ねられた篠原の言葉にふぅん、と汐見は頷いて。
「栂池って言ったら長野だよね。浩介って長野出身だったんだ?」
「お、よく知ってんな空閑。北アルプスのお膝元、ここに負けず劣らずの田舎だよ。しかも特別豪雪地帯」
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