読み切り #9 Cigarette Break「青木、火くれる?」
喫煙所に顔を出した鈴木が、無遠慮にタバコを咥えた口元を近づけてくる。
こういう時、イケメンは罪作りだな。
青木はぼんやり思う。だが、青木も何となく鈴木とのこのキスには慣れてしまった。
青木はすっと鈴木に呼吸を合わせる。
鈴木のチェ・ブランコの先に点った火。
整った鼻筋にほんの一瞬差した赤。
ゆったりと、鈴木の最初の一吸いの香りが広がる。僅かに紅茶のような香ばしさ。
疲れのせいか少々気怠げな様子でも、イケメンはイケメン。
なんだか悔しい。
これじゃ、薪さんが苦労するわけだ。
青木も煙りを吐いて、室長に心から同情する。
薪が大学時代からの親友にして現在は自分の右腕である、副室長の鈴木に微妙な好意を持っているのは、色恋沙汰に疎い青木にもわかる。
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