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    くろかわ

    @kuro_kawa945

    腐ってる
    創作とかサガフロ双子とかその時好きなものあれこれ描きたい
    絵も文章もどっちもここに上げます
    ワンクッションしてる絵は大体女装なのでご注意下さいませ

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    くろかわ

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    二人で暮らしてる間の色んな失敗SS四本
    一応CP無しのつもりでは書きましたが、同じラインで青紅も紅青も製造されてます。

    ##文章

    二人暮らしNG集■1
     家具を購入し、届くまで三日。それから家具を設置し、生活に必要な手続きをあれこれ終えるまでにまた三日。その間はずっとホテルを拠点にしていた。
    「はー、やーっと終わったな……」
    「そうだな……」
     一通り家具の設置や手続きが終わり、今日からようやく家での暮らしが始まる。
     二人共すっかり疲れ切った表情を浮かべ、ぐったりとリビングのソファーに座り込んでいた。
     落ち着いた薄いベージュ色をした革製のソファーは、二人が並んで座ってちょうどいいぐらいのサイズだ。もう少し大きい物を買うか悩んだが、足りなかったらまた買い足そうという事で、ひとまず小さめの物を買った。
    「生活するためにはこんなにも沢山の物が必要なんだな……」
    「本当にな……、買っても買っても足りない気がして仕方がない……」
     最低限必要そうな物だけを買ったので、リビングはまだ殺風景だ。
     壁に取り付けた時計も、二人で選んだ物だった。短針は八の部分を指しており、そこでようやく夕食を摂っていない事に気付く。
     冷蔵庫を買って、台所用品や食器も最低限は用意したものの、肝心の食材がない。
    「外で食べようって言ってたの忘れてた……」
    「……面倒だな……」
    「あぁ……」
     今日もあちこち移動したので、かなり汗をかいた。ある程度時間が経って乾いてはいるものの、このまま外へ出るのは躊躇われる。
     ひとまずシャワーを済ませようとなって、じゃんけんで決めた結果、ルージュが先にシャワーを使う事になった。
     自室へ着替えを取りに行ったルージュを見送ってから、ブルーはルージュが座っていた場所に上半身を倒し寝転がった。空腹感はあったが、それ以上に疲労感が強い。
     待っている間に寝てしまいそうだと思いながら、目を閉じてしまう。
    「あーっ!」
     突如、ルージュの部屋から悲鳴のような声が家に響いた。それを聞きつけて、一体何事かとブルーはソファーから飛び起き、ルージュの部屋へと向かう。
    「おい……! 急に大きな声を出すな……」
    「ブルー……どうしよう……」
     ルージュは今にも泣きそうな顔を浮かべて、ドアの所に立っているブルーを振り返る。
    「布団も枕も……買ってない……」
    「……マットレスも、ない……な……」
     悲鳴の意味に気付き、ブルーも頭を抱える。ルージュの寝具がないという事は、当然ブルーの寝具も買っていない。散々吟味してベッドを買ったはいいが、マットレスは別売りだった事を二人共すっかり忘れていた。
    「これじゃあ、寝られないな……」
     せめてマットレスだけでもあれば違ったのだろうが、それすらない状態ではとても眠れないだろう。リビングのソファーで寝ようにも、足をはみ出させた状態で一人横になるのがやっとだ。
    「仕方ない……」
     顔を見合わせて、大きくため息を吐く。
    「どこかホテルに泊まって、明日せめて布団だけでも買おう……」
    「そうだな……とりあえず、シャワー浴びてくる……」
     着替えを持ったルージュは風呂場に続く洗面所の引き戸を開け、ブルーはリビングのソファーへと戻る。
     再びソファーに寝転がり、深い溜め息をついて、これからする事を考えた。
     ルージュがシャワーを浴び終えるのを待って、ブルーもシャワーを浴びる。それから身支度を整えてマンハッタンかクーロン辺りへ移動し、ホテルを取って夕飯を食べる。寝るまでの工程が思ったより長く、もう一度溜息をついた。
    「……ブルー」
     ドアを開く音が鳴り、風呂場へ行ったはずであるルージュの声がブルーを呼んだ。また何かあったのかと、寝転がっていた体を起こし、ルージュの方を見る。
     服をほとんど脱いでいて、下着一枚のルージュが、またもや泣きそうな顔をしていた。
    「バスタオルも、ない……」
     その言葉を聞いて、ブルーは三度目の溜息を、深く深く吐き出した。
     シャワーはホテルで浴びる事にし、仕方なく服を着替え貴重品を持ち、家を出る。
     季節は夏の終りという事もあり、薄着でもまだ問題はなさそうだった。幸い夜になっても雨は降っておらず、心地良い風が吹いている。
    「ゲートがあって良かったな……」
    「そうだな……」
     結局翌日布団を買い、マットレスを注文し、その日は床へ布団を敷いて眠った。二人がベッドで眠れたのはそこからさらに二日経ってからの事だった。


    ■2
     特段用事がない限り、食事は毎日交代で作っている。二人共これまで料理などした事はなく、何冊か初心者向けのレシピ本を買って、日々あれこれと挑戦していた。
     今日の食事当番はブルーで、三十分程前からキッチンに篭もっていた。
     小さく腹の音が鳴り、キッチンに居るブルーの様子を窺う。真剣な表情で右手に包丁を持ち、左手を丸め、野菜か何かを切っているようだ。料理は順調に進んでいるらしく、リビングにいるルージュの元へ、包丁がまな板に当たる小気味良い音が聞こえてくる。
     コンロにはフライパンと寸胴鍋が置かれていて、鍋の方からは湯気が立っていた。
     完成するまでまだもう少しかかりそうなので、ソファーに寝転がり、読書を再開する。
     切っていた野菜を炒める音が聞こえ始め、さらに食欲が刺激されていく。その音が止まったかと思えば電子レンジの扉を開閉する音が聞こえた。
    「うわっ……!」
     突然聞こえてきた爆発音とブルーの声に、驚いてルージュの肩が跳ねる。一体何事かと起き上がってキッチンの方を見ると、扉の開いた電子レンジと、ルージュと同じように驚いた顔でレンジを見つめるブルーがいた。
    「うっわ……凄い事になってる……」
     キッチンへ移動し扉の開いたレンジを覗き込むと、白と黄色の物体が庫内に飛び散っていた。
    「卵はレンジで温めると、爆発するんだな……」
     深い溜め息を吐きながら、ブルーが小さく声を零す。どうやら、パスタに乗せるゆで卵か半熟卵を作ろうとしていたようだ。
    「えっ……そうなのか……?」
     先にブルーがやっただけで、もしかしたら卵を爆発させていたのはルージュだったかもしれない。
     気にするなとブルーの肩を軽く叩いて、キッチンペーパーを数枚手に取る。
    「こっちは僕が片付けるから、ブルーは料理の続きをしてくれ」
    「あぁ……すまない……」
     キッチンペーパーを水で濡らし、庫内の汚れを拭き取っていく。幸いにもまだ付着したばかりなので、拭くだけで汚れは落ちてくれる。ある程度拭き取ってゴミ箱へキッチンペーパーを放り投げるのを何度か繰り返している内、少しずつ綺麗になっていった。
     床に落ちた分も綺麗に拭き取り、いっぱいになったゴミ箱の中身を袋に移す。
     ブルーは鍋で茹でていたパスタをザルに流し込み湯を切ってから、フライパンで炒め始めていた。
    「もう出来そう?」
    「そうだな、多分もうすぐ出来る」
    「じゃあ、スープ用のお湯沸かしておく」
    「頼む」
     ダイニングテーブルに設置された電気ケトルに水を注ぎ、スイッチを押す。沸くまでの間にスープマグをテーブルへ置き、インスタントの粉末を入れて準備を整えた。
     食事に使うフォークやグラスを並べていると、食欲をそそる匂いが漂い始める。
     アラーム音が鳴り、湯が沸いた事を教えてくれる。ブルーが完成したパスタを皿に盛り付けているのを確認し、スープマグへ湯を注いだ。 
     ケチャップで味付けをしたパスタと、サラダにインスタントのスープ。テーブルにそれがを並び、向かい合って椅子に座った。
    『いただきます』
     手を合わせ、声を揃えて挨拶してから食べ始める。
     爆発騒ぎのせいで茹で過ぎたのか、パスタは少し柔らかかったが、味の方は何ら問題なかった。
    「ん、美味しい」
    「そうか、それなら良かった」
     ルージュの言葉を聞いて、ブルーは安心したように表情を緩める。まだ慣れないため、レシピを見ながらやっても失敗する事は多々あった。過去に食べた失敗した料理に比べれば、天と地の差だ。
     量もちょうどよく、全て食べ切ってからもう一度手を合わせる。
    「レンジにかけちゃいけないもの、今度調べないとな」
    「そうだな、卵以外にもあるかもしれないしな……」
     電子レンジは何でも温められる魔法の道具ではない。それを胸に深く刻んで、食べ終わった食器を流しに片付けた。


    ■3
     二十二時を回って少し。
     ブルーは自室の机に向かい、買ってきたばかりの本を読んでいた。様々なリージョンの裏道に存在する、隠れた飲食店を紹介している本で、料理の写真とコラムで構成されている。
     ページを捲りながら、気になった店のページに付箋を貼り付けていく。
     最近では休みが合えば二人で外食や買い物へ出掛ける事が増えた。こういう時、ゲートの術は本当に便利だ。一度訪れた事があるリージョンへ即座に移動できるため、ふと思い立って出掛けるのも容易い。
     今度はどこの店へ行こうかと、付箋を貼ったページを一つ一つ眺めていく。
    「うわーーっ!」
     声が聞こえてきたのは、風呂場の方だった。虫か何かでも出たのだろうか、それとも浴室で転んだりでもしたのだろうか。だが、夜にあんな大声を出されては近所迷惑になってしまう。などとあれこれ考えながら、足早に風呂場へと向かう。
     一応ノックをしてから、中を覗き込む。
    「おい、ルージュ! 何時だと思って……」
     風呂場の中には、全裸でしゃがみ込むルージュの姿。その顔はすっかり青ざめている。
    「どうした……」
    「……ふろ……つめ、た……」
     震える指先が、浴槽を指す。そちらを見れば、蓋が開いた浴槽の中には湯気の立っていない、おそらく水が入っていた。シャワーを使って髪や体を洗った後、追い焚きをしていない水が張られた状態の浴槽に飛び込んだようだ。
     リビングにあるリモコンの、追い焚きボタンを押していなかったらしい。ブルーもつい風呂を後回しにしてしまっていたので、風呂が沸いていない事に気付かなかった。
     ひとまず浴槽の近くにあるリモコンのボタンを押して、風呂を沸かし始める。今が春から夏に差し掛かる頃の、まだいくらか暖かい時期で良かった。これが真冬だったらもっと酷い事になっていただろう。
     とはいえ、このままでは風邪を引いてしまう。指先だけでなく、全身を震わせているルージュの体にタオルをかけてやり、体の水滴を拭っていく。
    「……さむ……」
    「とりあえず体を拭いて、髪を乾かすぞ」
    「むり……動けない……」
     冷え切ってすっかり固まってしまったルージュの体を、どうにかして立たせて脱衣所へ連れて行く。
     ルージュの手にもう一枚タオルを持たせ、ブルーは髪や顔の水気を拭う。最初は震えているだけだったが、少しずつタオルを持った手が動き始める。
     ある程度髪の水気を取ってから、拭き切れていない箇所を拭っていく。
     それから、下着と寝間着を着る手伝いをして、ブルーの部屋へと連れて行く。少し前までブルーが居た部屋の方が、いくらか暖かいだろうと思っての事だ。
     ベッドへ促してやると、寝転がってから体を丸め、頭からすっぽりと掛け布団を被る。それを少しだけ捲ると、恨みがましそうな目で見つめられたが、まだ半分濡れたままの髪を乾かさなくてはいけない。
     布団に包まって顔だけ出した体勢のルージュ。その上半身をブルーの右太腿へ乗せるようにし、洗面所から持ってきたドライヤーで髪を乾かし始める。
    「ん……あったかい……」
     温風が髪に当たり、布団の中で少しずつ体が温まり始めたのか、足の上にある身体から少しずつ力が抜けていく。ついでに髪の手入れもしてやりたいが、今この状態では洗面所へ物を取りに行くのは許されないだろう。
     膝に乗せている体が重くなり始めた頃、ドアの向こうから電子音が響いてくる。
    「……風呂が沸いたようだな」
     追い焚き終了の音が聞こえ、ドライヤーをかけていた手を止める。
     ルージュを膝から下ろしドライヤーのコンセントを抜いている間に、ベッドにこんもりとした布団の塊が出来ていた。それを剥がして中身を引っ張り出してやる。
    「いやだぁ……寒い……」
     布団の中に戻ろうとするのを阻止し、ベッドから引きずり下ろす。背中にしがみつかれながらも、引きずるようにして、どうにか脱衣所へ辿り着く。
    「……入れて……」
    「一人でやれ」
    「えぇ……」
    「風呂までは連れてきてやっただろう」
    「……うぅ……」
     渋々ながらもゆっくりとした手付きで寝間着のボタンを外していく。
     服を脱ぎ終わり、ルージュが風呂場へ入っていったのを確認してから、ドライヤーを片付け、脱衣所を離れようとする。
    「……あっつ!」
     冷えた体には、どうやら沸かしたての風呂は熱すぎたようだ。扉の向こうから弱々しく助けを求める声が聞こえてくる。
     仕方なく、風呂場に入ってカランから水を出してやった後、ちょうどいい湯温になるまでドア越しで話し相手をさせられた。


    ■4
    「……おはよう」
    「あぁ、おはよう……」
     朝六時半、同時に二人の寝室のドアが開く。目の下に隈を作り、これまた同じタイミングで眠そうに大きな欠伸をした。
     昨夜は二人共自室に引きこもって、夜遅くまで本を読んでいた。電気が消えたのは深夜三時を過ぎた頃で、二人が寝たのは三時間と少しばかりだ。それでも体はいつもの動きを覚えていて、フラフラとした足取りながらも洗面所へと向かっていく。
     並んで洗面台の前に立つと、やはり少し狭い。
     同時に手を伸ばし、お互い一つずつチューブを手に取る。ブルーはそれを歯ブラシに取り出し、ルージュは手に取ったものを顔へと持っていく。
    「んぐ……っ!」
    「うえっ……!」
     数秒置いてから、歯磨きをするブルーの手と、顔を洗うルージュの手が、同時に止まる。口の中に溢れる苦味と、顔いっぱいに広がる清涼感。
     ルージュは風呂場に駆け込みカランから出る水で顔を洗い、ブルーはその場で何度も口を濯いでから再度歯を磨いた。
     言いしれぬ沈黙が、洗面所に流れる。
    『はぁ……』
     二人の口から大きな溜息が零れ、ブルーは顔を洗い、ルージュは歯を磨き始める。今度は間違えないよう、しっかりチューブのパッケージを確認してからにした。
    「朝食準備してくる……」
    「おい、髪はいいのか?」
    「んー……、後で」
     眠気に加えて歯磨き粉で顔を洗った衝撃からか、まだ足をふらつかせたまま、ルージュはリビングへと向かっていく。
     ブルーはもう一度水で口を濯いでから、緩く纏めていた髪を解く。寝不足のせいか、普段に比べて髪の調子も悪いように思えた。
     友人の女性に教えられて買ったトリートメントを、スプレーで髪に散らす。それをブラシで馴染ませながら、少しずつ梳いていく。ある程度状態が良くなったのを確認して、いつも通り頭の後ろで結い上げる。
     似たような形状の物を近くに置くのは、絶対にやめようと固く誓い、ブルーは洗面所を後にした。
     リビングへ入ると、朝食の準備はほとんど終わっていて、後は飲み物を準備するだけとなっている。
    「コーヒー、インスタントでいいか?」
    「ん、お湯は沸いてるから頼む」
     食器棚からマグカップを二つ取り出し、コーヒーを用意していく。
    「まだ顔がジャリジャリしてる気がするな……」
    「俺もまだ口の中が気持ち悪い……」
     朝食を摂っている間も不快感は消えず、眉を顰めたままパンやコーヒーを飲み込んでいく。
    『ごちそうさま』
     食べ終えて食器を流しに置き、ルージュがそれを洗う。その間、ブルーは洗面所へブラシとトリートメントを取りに行き、ソファーでルージュが来るのを待っていた。
    「はぁ……朝から酷い目に遭った……」
    「ルージュ」
    「ん?」
     立ち上がりここへ座れと示すと、ルージュは大人しくソファーに腰を下ろした。背凭れの後ろに回り込んで、スプレーをかけながら銀色の髪を毛先から梳いていく。
     髪質はブルーとよく似ているのだが、ルージュの髪は少しだけ癖がある。おそらくは使っているシャンプーや手入れ、散髪方法の違いだろう。
     一通り髪を梳き終わると、小さく寝息が聞こえてきた。
     壁の時計はまだ八時少し手前。ブルーが家を出るのは九時頃、ルージュもそのぐらいだと言っていた。朝食も済んでいるし、準備には三十分もあれば十分だ。
     ブルーもその隣で寝てしまいたかったが、二人揃って寝過ごす可能性を考えると、そうもいかない。幸いにも、今日の予定は午前中だけなので、帰宅してから少し眠ればいい。
     まだ少し時間に余裕があるので、着替えをする前にもう一杯コーヒーでも飲もうと決める。ルージュを起こすのはそれからでも十分間に合うだろう。
     こくりこくりと揺れる頭を軽く撫で、キッチンへと足を向けた。
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