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    shirosaba

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    うちの里のウツハン♂で🐰🍡の日、前編

    白うさぎと桜見団子(真っ赤なお目々のうさぎと団子 前)カムラの里にある茶屋では、いつも明るい声が響いている。
    それは茶屋を切り盛りしているヨモギの声であり、名物であるうさ団子を頬張る客の幸せそうな声であり。
    だがその日は、いつもと違う声が茶屋前に響き渡っていた。

    「いらっしゃいませ、美味しいお茶とうさ団子は如何ですか?」
    いつも聞こえる呼び込みの声よりも、もっと低い―けれど通りの良い、優しさを感じる声。
    その声に引かれるように茶屋へと足を運ぶ客に、声の主がふわりと笑いかける。
    程よく筋肉のついた身体に、纏っているのはこの里で一般的に着用されている作業着。
    その上から、ささやかなフリルのついたエプロン……所々にうさぎのモチーフをあしらって、可愛らしい事この上ない。
    更に目を引くのは、声の主の頭上でぴょんと揺れるうさぎの耳。
    一見バランスの取れていない格好だが、それぞれが上手く組み合わされ、また着ている当人の童顔さも相まって、誰も違和感を覚える事がなかった。
    ……当人以外は。

    日付の語呂合わせで急遽決められた「うさ団子の日」に合わせ、一日限定お手伝いさんとして選ばれたのは里の英雄、噂に名高いカムラのハンター、「猛き炎」その人であった。
    遡ること数日前、偶々依頼がなく鍛錬も兼ねて里の見回り、ついでに何処かで釣りでもしようかと自宅を出た彼を、鬼気迫る顔のヨモギが捕まえ、あれよあれよと話が進み今に至る。
    やるなら派手に!というヨモギの一声で、当日はヨモギも含めてうさぎに因んだ格好をすることとなり、それならばと白兎獣の素材から出来た装備を引っ張り出そうとしたところにヒノエとミノトに見つかり。
    話を聞いたヒノエは目を輝かせ、得意の裁縫であっという間にうさぎの耳と可愛らしいエプロンを作り上げた。
    出来上がったそれらを見て、あまりの可愛らしさに自分が身に着けるものだと思えず、「ヨモギちゃんの、だよな?」と訊いてしまったのも仕方のない事であろう。
    それを聞いたヒノエがハンターの手を取り、「まあ、貴方のものですよ?……真っ赤なお目々に白いうさぎの耳。ヒノエの自信作、着けてみてくださいな」などと鈴のような声で言うので、真面目で優しいハンターは断る事も出来ず、製作者であるヒノエの前でそれらを身に着けた次第である。

    初めこそなんだか気恥ずかしく、そもそもこんな格好は男の自分がやっても喜ばれず、寧ろ食欲が失せて客足が遠退くのでは……と心配していたハンターであったが、何故か客が途絶える事はなく、里の面々からは暖かい言葉を頂き、里外からの観光客からは熱い視線を向けられている。
    そんな周りの反応に首を傾げながらも、何事も最後までやり遂げることを信条とする真面目な青年は「いつもお世話になっている茶屋の力になれれば」と、慣れない接客に精を出すのであった。

    薄桃の花びらが風に乗って舞う中で、真っ赤なお目々の白うさぎがお団子片手に忙しなく回る。
    絶えぬ客の一人一人と向き合い、思い遣りのある細やかな接客と、その愛らしい姿は後にヒノエからエルガドの面々へと伝わることとなり、そわそわと落ち着かない様子のフィオレーネから「此方ではそういった催しはしないのか」と尋ねられたハンターは、困ったような笑みを浮かべることしか出来なかったという。
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    z0ed0

    SPUR MEこちらは2023/8/6開催『床下クッキーパーティ』展示作品です。

    ヒナイチの生まれ変わりが事故で吸血鬼になったと同時に前世の記憶を取り戻してかつての伴侶だったドラルクに会いに行く話です。(未完成)

    製作途中のため途中を飛ばしたり読みにくいところがあります。
    私が読みたいので尻叩きにご協力いただけますようお願いいたします。
    転生・転化ドラヒナ(タイトル未定) 噛みつかれた痛みとともに覚えのない記憶が一気に脳に流れ出した。
     大好きなクッキーの味、優しく私の頬を優しく撫でる血色の悪い細い指、少し細めて優しく微笑む貴方の顔。
     どうして忘れていたのだろうと涙を流しながら目の前で崩れて塵と化す吸血鬼を呆然と見つめる。あの人はしょうもないことですぐ死ぬ吸血鬼だった。
     視界が霞んでいく。遠くで誰かが叫んでいる。それらの意味を理解できる余裕が私にはなかった。
    「…っああああああああああああああああああああ!!!」
     次の瞬間体中に激痛が走り地面に膝をつく。鼓動がいつもよりもずっと大きくてはち切れそうだ。これが前の私が感じるはずの感覚だったんだと頭が勝手に判断する。あいつが与えてくれるはずだった感覚なのだとナイフで傷口をなぞるようにひしひしと刻み付けられる。
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