奇術師は失敗した ロドスのオペレーター・リーは任務の際に奇術師の扮装をすることがあり、即興でマジックショーを開くことがあった。彼が得意としたマジックの一つが、「オルフェウス」である。名前の由来であるミノス神話の通り・死者の復活を題材としたマジックだ。例えば、枯れた花を花瓶に入れる。布をかぶせ、神秘的な呪文――炎国語は聞きなれない人間にとっては秋風のように耳触りの良い呪文だった――と共にステッキで触れ、その後に布を取り払う。するとそこには瑞々しい生花が咲き誇っている。或いは、枯れた花を誰かに渡す。不気味なプレゼントに辟易しているその人の手を取り、彼が握手をする。握手の後に再び手元を見ると、花は時計の針を戻したように、芳しく咲く生花へと変貌している。
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