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    はるち

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    はるち

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    メイド服のドクターとマジシャンコーデのリー先生がイチャイチャしているところが見たい

    living loving maid「今日は私が尽くしましょうか」
    黒と白のエプロンドレス、肩口で膨らんだ袖から伸びる腕は白の手袋で覆われ、背中には飾り襟と黒のリボンが垂れていた。ドクターがその場で一回転すると、膝の上までしかないスカートが風をはらんでふわりと翻った。裾から伸びる脚は白いニーハイソックスに包まれ、ガーターベルトで留められている。
    「どう、似合う?」
    悪戯っぽく笑いかけるドクターは、見慣れた白衣と上着のモノトーンではなく、目に痛いほど鮮やかな白と黒のメイド服を着ていた。これはそう、今回のライブRPG「旧宅の異宝」にてメイドに扮したカゼマルの衣装だ。それが何故。
    「カゼマルは自分の紙人形用に何枚か予備を持っていたからね。私にもサイズが合うものがあったから、少し貸してもらったんだ」
    今回のwitch feastではリーも参加することとなり、怪盗兼マジシャンという役どころを――一体全体どうしてこんな大役が自分に回ってきたのかわからない。マフィア相手に一ゲームで三つ約束を勝ち取っただろうなどと言われたが何の話かさっぱりだ――、演じることとなり、今日はその衣装合わせだった。普段とは違う装いを、ドクターにも見せびらかそうと思って舞台裏へとやってきたのだが。まさか自分が見せつけられる側に回るとは。
    「……似合っていますよ、とても」
    正面切っての褒め言葉に、動揺したのはドクターの方だった。直截的に褒められるとは思っていなかったのだろう。わずかに視線が泳ぐ。その隙を逃さずに、リーは距離を詰めた。平時はフードの下に隠されている、銀糸の髪を指に絡める。
    「こんなに素敵なメイドがいるお屋敷に、おれも行ってみたいものですよ」
    「……ふふ、なら」
    今日は私が尽くしましょうか、お客様、と。ベストの上から肌を撫でるように、ドクターの指先が服を伝う。向けられる流し目に、ぞくりと肌が粟立つ。嗚呼、一体いつの間にこの人は、こんな顔を覚えたのか。
    「……ご主人様とは呼んでくれませんか」
    「そういうのがお好みかい?……ああ、いや、この言い方は良くないな」
    役になりきるためだろうか。ドクターは――否、メイドは一つ咳払いをする。
    「私が仕えているのははだらしがなくて胡散臭い、探偵事務所の所長ですので」
    「あなたが仕えている?逆じゃないですか?」
    「うるさいな。……、ええ、本当に。私にも甲斐甲斐しい人なんですよ」
    「成程、成程。それで、主人に代わって、あなたがおれをもてなしてくれると」
    「勿論。大切なお客様ですから」
    舞台の延長線上にいるようだった。ただし配役は違う。ならば脚本も、結末も。舞台裏には、マジックの小道具がまだ残っていた。人体切断用の箱。その上に緩やかにメイドを引き倒しても、彼女は何も言わなかった。月が影を落とすように、銀の髪が散らばる。
    今の自分は怪盗とマジシャンの、どちらの役回りを求められているのか?主人を楽しませるためにやってきた魔術師、或いは大切なものを盗みに来た怪盗か?
    そのどちらでも構わなかった。大切な宝も、楽しませるべき賓客も、もてなしてくれるメイドも、尽くすべき番も。今はその全てが、この腕の中にあるのだから。
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    はるち

    DONEドクターの死後、旧人類調技術でで蘇った「ドクター」を連れて逃げ出すリー先生のお話

    ある者は星を盗み、ある者は星しか知らず、またある者は大地のどこかに星があるのだと信じていた。
    あいは方舟の中 星々が美しいのは、ここからは見えない花が、どこかで一輪咲いているからだね
     ――引用:星の王子さま/サン・テグジュペリ
     
    「あんまり遠くへ行かないでくださいよ」
     返事の代わりに片手を大きく振り返して、あの人は雪原の中へと駆けていった。雪を見るのは初めてではないが、新しい土地にはしゃいでいるのだろう。好奇心旺盛なのは相変わらずだ、とリーは息を吐いた。この身体になってからというもの、寒さには滅法弱くなった。北風に身を震わせることはないけれど、停滞した血液は体の動きを鈍らせる。とてもではないが、あの人と同じようにはしゃぐ気にはなれない。
    「随分と楽しそうね」
     背後から声をかけられる。その主には気づいていた。鉄道がイェラグに入ってから、絶えず感じていた眼差しの主だ。この土地で、彼女の視線から逃れることなど出来ず、だからこそここへやってきた。彼女であれば、今の自分達を無碍にはしないだろう。しかし、自分とは違って、この人には休息が必要だった。温かな食事と柔らかな寝床が。彼女ならばきっと、自分たちにそれを許してくれるだろう。目を瞑ってくれるだろう。運命から逃げ回る旅人が、しばし足を止めることを。
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