◇刀剣ホラーもどき◇刀剣男子には、それぞれの物語がある。
物語、とある物語を始めましょう。
お人好しで事なかれ主義で、都合のいい存在だった少女の物語。
「お前、最近帰りが遅いけど、何処にいるんだよ?」
背の高い整った顔の青年が、ブレザー姿の一つの下の幼馴染の少女に声をかける。少女は自身の玄関の前で達、冷ややかな目で青年をみる。
「どこって、友達の家。大学の受験勉強だけど?」
首を傾げて答える少女に青年は舌打ちをして顔を歪まて『不愉快だ』と表すにする。二人の関係は元々悪くなかった。青年の言葉に少女は従い、青年が車の免許を持つと「ドライブに行こう!」と拒否権なしに連れ回した。
少女もとくに基にすることなくそれに付き合った。
青年と同じ歳の少女の兄も兄で『妹を好きに使え〜。事故るなよ〜』と軽い扱い。
真ん中にあたる姉がいるが、姉は姉で「あいつ、顔はいいけど中身はサイテーだから、アンタが相手してあげてよ。アンタのこと気に入ってるから」似てるようで似ていないが、人寄せる美人な顔の姉はあさっりと告げる。
少女は、目の前で苛立つ青年に幼い頃から、都合のいい存在と扱われてきた。
しかも、長身で顔はいいので同級生や部活の仲間からは青年の情報、恋文を渡すようにと頼まれた事もあった。時には青年の同級生の女性に嫉妬、怒りをかって、さんざんな目にあった。
少女は『だから、イケメンは嫌い。こいつはもっときらい』を表に出さないように微笑む。
「お前、友達いたのか?」
「いるよ。」
少女は元来の冷え性もありマフラーをぐるぐると口元まで隠すように巻いているので、顔を良くみえない。
少女は、青年のせいで友達を何人か縁を切っている。元凶の青年もそれを知っていた。
………いや、わざと減らすように仕向けられた。今になってはもうわからないし、どうでも良かった。
「それで、どこの大学受けるんだ?なんなら、俺が教えてやろうか?」
男は地元でも有名な理系の大学。
少女は高校は文系選択だ。教えるのなんで苦ではない。青年は思った。
「私が何処に受験するのは私の勝手。勉強は友達の兄弟が教えるのが上手だからけっこうよ。話はそれだけなら、時間も時間だから。おやすみなさい」
少女は何事も無かったように手を振り自宅にとはいる。路上に青年が少女の名前を呼ぶ声が小さく響いた。
「ただいま。」
少女は帰宅の言葉を告げて、足取り早く自室にいく。少女の母は「お風呂、準備してあるからね~!」とだけ声がかけられた。少女は事前に「友達の家で食事をとる」と連絡していた。
がちゃんと玄関がしまるのを、青年は「くそ!」と呟き、みつめた。
今まで青年の言葉に少女が反抗を見せることはなかった。最近、いつだか学校帰りが22時を周り遅くなった時。少女の母親曰く真っ青の顔で帰り、その後、三日目と発熱をして寝込んだらしい。
それからと少女の曖昧だった進路を大学進学と決めて、受験勉強に取り組んだ。休日祝日も友達の所といい家を空ける。
少女の家族に、彼女の進路は大学受験と皆が言うが大学名だけが「あれ?なんだっけ?」とど忘れしていた。
少女は青年の彼氏ではない。だが、幼い頃から自分の誘いを断らないで、めんどくさそうにも「いいよ」っと付き合ってくれた。
その少女は今は、連絡を遅れて返事。誘いも「受験勉強がある」と体よく断っていた。
高校でも近所でも面倒みの良く、子供たちからも好かれていたる、お人好しの少女。
両親の他愛もない喧嘩を進んで仲裁して、突然の来訪の祖母の接待。父と祖母による男尊女卑に近い不快な言葉。
兄の落ちのない話相手、姉の買い物のパシリ。争いを嫌い、事なかれ主義。家族のていの良い緩衝材。
1月の半ば。いざ、大学受験まっただ中。
少女の家で、彼女の兄の部屋に青年はいた。そして12月から一度も見かけない少女の事を聞いた。
「あぁ、妹なら受験中は親戚の家で過ごすことにしたんだ。」
「はぁ?!」
兄の言葉に青年が驚く。
「し、親戚の家?」
青年の頭の中では聞いていない。なんだ、その話?大事な受験の時に自宅じゃなくて親戚の家?っといろいろと言いたいことが頭をめぐり混乱する。
少女の兄はケラケラと笑いながら「驚くよなぁー!」と。
「俺も両親から聞いたんだよ。12月の半ばに親戚の家から学校の残りの二学期は通って、大学受験が終わるまでは親戚に家で過ごすって。」
実の妹なのに、あっけらかんと話す兄に青年は言葉を失う。
どこの親戚だ?
んー、どこだったかなぁ?うちも親戚が多いからなぁ?でも、おじさんもおばさんもいい人だし、あいつも懐いてるから大丈夫だろ。
どこの大学を受験するんだ?
どこでもいいだろ?あいつの人生なんだから。
たまには戻ってくるのか?
いいや?決まるまでは戻らないって。でも、この辺の大学ならどこも合格ラインだから大丈夫だろ。あいつ、受験するって決めたから急に学力上がってさぁー。
青年は兄に違和感を感じた。実の妹のはずなのに、どこか、他人事のように。大事な所がすっぽりと抜けおちているように。
いくら親戚とはいえ、少女は未成年だ。
たまには帰ってきたり、年越しをしたりと、何かしらあるはずなのに。
「悪い。俺、帰るわ。」
「え?おい、ちょっと!!」
心配をまったく持たない兄。以前はそんな事はなかったはずだ。
青年は得体の知れない恐怖に、その家を慌ててでた。
その後、少女の姿をみるまで、彼女の両親、姉に彼女のことをきくも、親戚の家にいるから大丈夫よっとだけ返事が返ってきた。
どこの親戚、どこの大学、詳しく聞こうとすると笑って「あいつのかってだろ?」っと同じく答えが返ってきた。
少女の家族は、そんな少女の存在が緩衝材として体良く使っていた。少女の存在が、まるで無かったかのようなことなんて、ありえない。
「………そう、ありえないはずだ。」
慌てて隣の自分の家に戻ろうとするも、足がつんのめり、慌てて塀に手を付けて青年はとどまる。
「わ。お兄さん、大丈夫?」
「…平気?」
青年の前には、二人の少年。
一人は少女の同じ年位だろうか?艷やかな黒髪に赤いマフラーに黒いロングコート。ワンポイントにつけられた赤が目立つ服装で中世的でいるがどこか色っぽい顔立ち。
もう一人は、反対に白い短い髪に黒いマスク。紺色のコートに黒の細身のパンツにショートブーツ。切れ目がち目はどこか狐を思わせ、あどけなさがのこる顔。
「あぁ。大丈夫。ありがとう」
とんだ所をみられた。青年は恥じらいを感じる。
「……おにーさん、顔色悪いけど、本当に平気?」
黒髪の少年が青年の顔を覗き込むように見る。隣にいる少年も不安げに見つめる。
「あぁ、大丈夫。心配ありがとう。」
引きつりながらも作り笑いをする青年に、少年二人は顔を目線だけで何がやりとりをした。
「大丈夫なら、いい…。お大事に。」
白い髪の少年がぼそっと呟く。それに黒髪の少年も「そっか、それじゃぁ、お大事にね、お兄さん」っと声をかけて、青年から離れる。
ーーーコン。
過ぎ去る二人の後に何が動物の鳴き声した。
「きつね?」
白髪の少年の後ろ姿に、一瞬だけ狐がみえた。
2月。青年の耳に少女の大学合格の話が届いた。けれどもそれだけで、大学名はわからない。少女もそのまま親戚の家で卒業式を迎えると。少女の家族はすんなりとそれを受け入れた。青年はその反応に漠然とした。
徐々にと、少女の存在が希薄になる。少女がいないことが当たり前にと。
「どういうこと、だ?」
兄は彼女を体のいい話相手。姉は彼女をパシリや付き添いに。母親は彼女をサンドバッグの様に愚痴をずっと話す。
父はまるで愛玩動物の様に彼女に接する。
そばでそれを聞いてきた、見てきたはず。あの家は少女がいないと回らない家だったはずだ。緩衝材の少女。青年の頭が混乱した。
青年と少女は高校が一緒だった。青年は後輩から卒業式の日を聞いて、一年ぶりに高校に行く。正門で少女の姿を見ようと。
青年は、自身の顔に惹かれていた後輩達に囲まれる。焦る心を抑えてる笑顔を作り出す、後輩達に挨拶をする…。
視界に同級生と微笑み、卒業証書をもった少女を見つける。己に群がる後輩達に「ちょっと、悪い!」と一言いい、青年は少女に近づくために、体を動かした。
ー「失礼、大変申し訳ないが、道を聞きたいだけど、いいでしょうか?」
自分に掛けられてものじゃない。こんなに人が大勢いるのに。かけられた声は青年の耳にとしっかりと届いた。物腰柔らかな『男性の声』。自分のまわりには自分の『顔』に惹かれた女子の後輩や、慕っている男子の後輩が数人いるはずだ。
自分じゃない。
そう思い、一瞬振り返るのをやめて前に、少女の元にと体を進めようとする。が。
「あぁ、まって、待って下さい!」
声をかければ届く距離に少女はいる。だが、声を出してまで少女を呼ぶのは自分の性格ではありえないし、穏やかな男性の声が焦るのも気になった。
同級生と微笑む少女から視線を外し、周りを見回すように振り返る。周りにいた後輩達はいつの間にか去っていて、自分だけ、ぽつりとそこにいる。
眼の前には、メガネを掛け、桜の花の色の様な髪をした声と同じく穏やかな顔つきの男性。すらりととした細身の体格をした男性。その隣には白髪に黒いマスク、いつかみた少年がいた。
青年と男性の目が合う。男性は気付いてもらえたのがよかったのか柔らかく微笑み「すみません」と。
「気づいて貰えてよかった。道を聞きたいんです。」
「………はぁ」
青年は、メガネの奥で灰色の目を細める男性に胡乱げに答えた。説明してる間に青年は少女を見失った。
その後、少女は家に帰った様子はなかった。
それから、一年が過ぎた。
少女はそのまま親戚の家で大学に通うになったと卒業後に少女の兄から話があった。
春が過ぎ、梅雨が来る前の長い連休の祝日が過ぎた。夏も過ぎだ。秋も過ぎ、冬がやってくる。少女の姿は見ない。
「あいつ、帰ってきてるのか?」
「あいつ?」
「お前の妹だよ!」
「はぁ?帰るもなにも、妹ならいるだろ?」
青年は、まったく見かけない少女のことを兄は聞く。兄はすぐ下の妹、少女の姉にあたる『妹』の話をする。
「そっちじゃなくて」
「はぁ?お前、何いってんだ?俺には妹は一人しかいないぞ?」
嘘の下手くそな少女の兄。
その顔には嘘はなく、本当にいない、三人兄弟ではなく二人兄弟ですと言わんばかり顔。
青年はぞっとする寒気を抑えて、少女の兄の部屋出て、ノックもなしに部屋をあける。
後ろから慌てて少女の兄が青年の名前を呼んで「ちょっとまてよ、おい!」っと叫ぶ。
ドアの先は、積まれたダンボールや季節ものが仕舞われている物置部屋になっていた。
ずっとあった、ずっと見てきた景色がそこにはなかった。
青年は呆然とドアの前で立ち尽くした。
「どういうことだ?」
「どうもこうも、その部屋は荷物部屋だろ、ずっと昔から。」
「ずっと、昔から?」
「じーさんとばーさんじゃ、二階はキツい。客間として使うもの変だし。まぁ、妹が一度占領しそうになったがな。」
この部屋は少女の部屋だった。はず。
けれども部屋には、少女の存在感はどこにも無い。少女の存在なんてどこにも、初めから居なかった。そんな風に。
ーーーこん。
青年の耳に動物の、狐の鳴き声が聞こえた。
振り返ると傍にいた少女の兄はいなく、目の前にはちょこんと座るキツネがいた一匹。
「これはこれは。意外と覚えている方がいらっしゃったようです。お仕事はしっかりとやりましょうか。」
「きつねが、しゃべった?」
驚愕する青年に狐はとてとてと近寄り、じっとその瞳を見つめる。
「これで終わりだといいんですけどね。ふっきた途端に大胆といいますか、覚悟いいといいますか。彼女の嫌いなものの理由がはっきりとわかりました。あなただったんですね。」
まるでお面のよう変な模様が顔描かれたキツネ。言葉を失い青い顔をする青年。
「大丈夫ですよ、明日には、もう・・・」
----コン。
狐の鳴き声が小さく響いた。
そうして、青年の意識は途切れた。
◇◇◇◇
刀らぶホラーは私には無理でした凹
さて、はっきりとした創作審神者の彼女は出ませんが、彼女が顔のいい男が嫌いっという理由はこういうわけです。
顔がいい男と周りに振り回されて嫌いなったっという訳です。心の底、親の仇、生理的に無理・嫌いってわけじゃないんです。傍にイケメンがいたけと、それ以上のイケメンなので普通に目が慣れなくて、むず痒いだけ。
ボツ案ですが、供養として挙げることにしました。
出てきた刀剣男士は誰だか分ったでしょうか?w