俺の好きなやつに好きなやつがいる 三郎が好きだ。
俺が世界で一番三郎のことが好きなんだ。
でもこれは知られちゃ駄目だ。バレたら絶対に嫌われる。そうなるくらいなら、普通の兄弟のままで……。
「おつかれ!」
兄ちゃんの声で俺はスマホから目を上げた。
夕飯の片付け当番だった三郎と兄ちゃんが皿を洗う傍ら、ダイニングテーブルに頬杖をついてだらけていたら、二人は俺が思ったよりも手早く仕事を済ませたらしい。
「一兄もお疲れさまでした」
俺には絶対に使わない声音で返事をしてから、三郎がこちら側を向いた。
「おい二郎、お前用もないのにいつまでここにいるんだよ」
いつもならそんな悪態が頭上から降ってくる頃だ。
それはお前、三郎がフリーになるのを待ってたからだよ。
3252