無性別博士 ドクターが微熱状態になってから72時間が経過したとサーベイランスマシンが告げてきたのは、その日の午後ことだった。
放置することも考えたが、長引くと作戦行動に支障が出るかもしれない。賢いドクターは観念して主治医であるケルシーの診察を受けた。
いくつかの検査後、彼女は言った。問題ないと。
「性分化が始まっているだけだ」
「せいぶんか」
賢いドクターも咄嗟にオウム返しをしてしまった。もちろん、知識はある。無性で産まれた生物が、男性性か女性性を獲得することだ。
だが、それが自分の身に起こるとなると、まったく、びっくりするような事態であった。
「だ……だから自分は股ぐらに穴も棒もなかったのか! 一生独り身で生きていくものだと諦めていた……ッ」
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