背中の跡 背中についた爪の痕が、痛いのか熱いのかわからない。ガンガディアは朝陽が差し込む窓を薄目で見ながら、隣から聴こえる規則正しい呼吸音を聞くともなしに聞いていた。まだ朝というには早い時間だが、元より魔族は睡眠時間が人間より短いので時間を持て余していた。
夜を共にしたからといって、なにも朝まで一緒にいなくともよいとガンガディアは思っていた。なので以前に寝たときに夜のうちに帰ったら、次に会ったときに冷たくされた。帰るなら先に言え、言わないなら朝まで一緒に寝てろ、とつっけんどんに言われたのだ。
人間の眠りは長い。脆弱な身体しか持たないから仕方ないのだろう。ガンガディアはそっと起き上がると横に寝ているマトリフを見下ろす。細い肩がむき出しになっていたのでシーツを引き上げた。
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