布団から出るとひんやりとした空気が素肌を包み、寂雷は床に落ちているアロハシャツを拾った。半袖ではあるが上等な仕立てで着心地が良く、なかなか気に入っているのは小さな秘密だ。
シャツ一枚で向かったリビングはいつものコーヒーの匂いが漂っていて、寂雷は大きな窓に一番近いソファに腰掛ける。涼しいはずだ、普段とは違い、ヨコハマの街が雨雲に隠れてよく見えない。
無言で隣に座った左馬刻から手渡されたコーヒーは、白い湯気を立てていた。
(この前は、アイスコーヒーだったな)
一口啜ると優しい熱が腹まで落ちて身体を中から温めていく。次の季節を共に迎えることができる幸せに浸りながら、二人はただ静かに、降り続く雨を眺めていた。