冬にしか味わえない贅沢というものがある。
掘り炬燵で足を伸ばし、もちもちのお餅に包まれたアイスを齧れば、優しい甘さが滑らかに溶けていく。ほう、と息を吐くと、芳しい香りを漂わせたマグカップが目の前に置かれた。
「こんな時間に珈琲かい?」
「まだ寝ないからいいだろ」
炬燵布団を捲って隣に座った左馬刻くんにもう一つ残ったアイスを容器ごと渡し、珈琲を一口啜る。円やかな苦味が、舌に残ったバニラの甘味と共に腹に落ちた。隣に体重を傾けると、ぐっと腰が引き寄せられ、左馬刻くんの体温を感じる。
(ああ、最高の贅沢だ)
暖かな冬の夜が、ゆっくり静かに更けていく。