恋の終わり、情の始まり「誕生日おめでとう、アキラくん」
千石さんのアパートで俺は21歳を迎えた。酒が飲めるようになって一年、もう年齢確認をされるワクワクもなく、今日も先週や先々週と同じように近所のスーパーで買い込んだ酒を二人で開けていたところで、日が変わった。
「乾杯しようよ」
千石さんが掲げるのは特別な日に持つようなワイングラスではなく、100円の缶チューハイだ。
「飲み始めたときも乾杯したじゃないすか」
「君の誕生日になったんだからそう言わずに」
俺が持っている缶に掲げた缶をぐいぐい押し付け、千石さんは「乾杯」と言った。
「君の誕生日に一緒にいてくれない跡部くんなんて捨てちゃいなよ」
千石さんは酔っ払うとそればっかりになる。跡部なんて捨てちゃえ。もう何回言われただろう。週に最低一回のペースで互いの家で飲んでるから、50回は言われたと思う。十代の頃からなんだかんだで繋がりはあったけど、こんなに頻繁に会うようになったのも、千石さんが酔って悪魔みたいに囁くのも、俺が酒を飲めるようになって、跡部の許婚の話をしてからだ。
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