★ちゅーしないと具合悪くなる話「そんなことあるか?」
俺の話を聞き終えてやっと顔を上げた田沼は、どうも納得がいっていないような顔をしていた。
まったく、同感だ。
俺もそんなことがあっていいとは思っていない。でも。
「あるのだ。これが」
得意げに横から割って入ってきた先生が膝の上に座る。
そこから俺の胸に爪を立てて上り、肩にずしと乗る。
鼻か、口か、わからないがひんやりした冷たいものが頬に当たった。
瞬間、頭痛がすっと引いて頭が軽くなるのを感じた。
「き、キスしないと具合が悪くなるなんて」
先生と俺を交互に見て、田沼が赤くなっている。
猫から頬にキスをされた俺を見て、赤くなっている。
俺にも理解はできていない。
証明するにも、自分の不調を人に説明するのは難しいのでこれは信用してもらうしかないのだが、それでも自分が一番分かっている。これが嘘でないこと。
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