旅の夜 1 ◇
J○XA主催のシンポジウムに登壇するため、新田零次は相棒、真壁ケンジと共に久々に日本を訪れた。
帰国早々、古巣の筑波でミーティングに参加して、その後も分刻みのスケジュールで新聞や雑誌の取材をこなす。移動の疲れでついつい漏れる生あくびを、二人は笑ってそっと気遣いあった。
今回、シンポジウムの開催地に選ばれた小さな町は、広大な汽水湖を抱く星空の美しいところだった。
『小惑星に生命の源を求めて』
そう銘打たれたシンポジウムの特別ゲストにふさわしく、零次とケンジは近い将来、小惑星への有人探査の旅に発つ。人類史上初の壮大で勇敢な試みに、アサインされた二人の志は崇高で明るい。
眉目秀麗でクールな零次と、朗らかで凛としたケンジのコンビ——NASA選り抜きの日本人宇宙飛行士への興味は熱く、質疑応答の場面では二人が語りあうたびにホールが沸いた。ちなみに、フリートークで触れたのは、月面滞在中の南波兄弟、特に兄・六太の裏話。二人だから知る六太宇宙飛行士の頬笑ましいエピソードが、客席の和やかな笑いを誘った。
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