空に君を想う 平和が訪れた。その功労者である勇者がひっそりと訪れたのは魔王軍との最終決戦の地だった。
あの戦いで魔王軍は勇者たちを待ち構えていた。地底魔城のその周囲を埋め尽くすほどの魔物たちを一手に引き受けたのはマトリフだった。その魔王軍の先頭にいたデストロールをアバンは覚えている。そこからどんな戦闘になったのかは、先に進んだアバンには知りようがなかった。ただ勝ったのはマトリフで、その戦闘の激しさは筆舌に尽くしがたいものだったのは変わり果てた地形からも明らかだった。
だが、今その地面が変わっていることにアバンは驚いていた。呪文のせいか、あるいは魔物たちの攻撃で抉れて起伏が激しくなっていた地面には一面の花が咲いていた。それが風に吹かれて揺れている。
1952