苦しい。
腕の中で聞こえた声に、抱きしめる腕に力を込め過ぎたかと思ったが、どうやら違うとすぐに気づく。
喉を押さえながら苦しむ涼太。突然の異変にどうしたらいいか分からずに混乱していると、水の跳ねる音が聞こえ顔を上げる。
音、泉の方角へ目を向ければ、そこにはサクラとニワの姿があり、何かを訴えるように泉の中で尾を水面に叩きつけていた。まるで早くしろというように音を立て続ける姿に二匹の意図に気づき、すぐに宗司は涼太の体を抱き上げ泉に走り出した。
大きな音を立てながら泉に飛び込み、涼太の体を泉に下ろす。すると先ほどまで苦しそうだったのが嘘のように、呼吸が安定し始めた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう。サクラと、ニワも」
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