Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    時緒🍴自家通販実施中

    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
    無断転載禁止。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😻
    POIPOI 192

    初めてしたキスの話題で盛り上がる36歳。
    800文字チャレンジ40日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    間接キス(ストロベリーシェイク) 初めてしたキスはいつだったか。そんなことを真面目に考える年でもないが、母によれば俺の初めてのキスは隣の犬なんだという。人間だけじゃなく動物もカウントするなんて良い母親だとともに酒を飲んでいたギノは言ったが、正直なところ、俺は彼の初めてのキスがさっきから気になってしょうがなかった。
     始まりはこうだ。花城が読んでいた雑誌のカルチャー欄に、初キスの話題があった。初めてのキスを取り戻すことは自分の人生を取り戻すこと、が謳い文句の映画だ。あの場は花城の質問だけで軽く終わってしまったのだが、どうも俺たちは後を引いてしまって、官舎に戻ってまだその話をしている。酒を飲んで、簡単に作ったつまみを口にして、それからたまにくすぐり合って手のひらを合わせて。
    「俺の話はこれで終わりだよ。ギノの初めてのキスの相手は? 男? 女? それとも動物?」
     そんなふうに尋ねると、ギノは視線をそらし、どうだったかな、と考え始めた。幼い頃付き合っていた(彼によればおままごとの延長線上のような恋愛だったそうだが)相手がいるそうだから、その女の子だろうか? だったら可愛いな。可愛い恋愛をする可愛い恋人。俺の恋人は初めてのキスのエピソードまできっと可愛い。
    「初めてバーガーショップに行って、そこで頼んだシェイクを友だちだと思ってたやつに取られて、それを返された時、かな」
     ギノは笑ってそんなことを言った。ギノが初めてバーガーショップに行ったのは、俺が遊びを覚えろと連れて行ったからで、シェイクが美味そうだったから味見させてくれと頼みもせずに飲んだのは俺だ。じゃあギノはあの間接キスもカウントに入れてる? ストロベリーシェイク、甘酸っぱい苺の味。
    「正しくは放課後の理科室じゃなくて?」
     告白して、初めて触れた時にしたキスを言うと、彼は少し驚いた顔をして覚えていたのかと言った。失礼だな、俺だってそれくらいの記憶力はある。
    「俺はお前が考えてるよりうぶだったんだよ、狡噛。もうそうじゃないって言ったら気に入らないかもしれないが?」
     ギノが俺の首に腕を回す。俺はそれに甘い予感を感じながら、そんなの歓迎じゃないかと心を弾ませていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
    1852

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
    3531

    related works