経験なんて役に立たないこともある 今日がハロウィンだと気が付いたのは、マンションの駐車場に車を停めてすぐだった。聞き慣れた通知音にスマートフォンの画面を見れば、恋人からの『牛乳買ってきてほしいです』の連絡。そのついでに、十月三十一日の日付も目に入った。別にテンションの上下があることもなく、ああそう言えば今日だったな、とそれくらい。もう少し早ければコンビニに寄れたのに。
自分にはハロウィンだからと特別なことをする習慣はないが、街の装飾や店は八月が終わった途端にハロウィン仕様に変わる。せっかくの装飾も一ヵ月も経てばただの見慣れた風景になってしまったけれど、そういえば確かに仮装をした集団を見かけたような。
『今駐車場に着いたとこ。今いるなら行ってくるよ』
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