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    ろくでもない

    @kabesaido

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    ろくでもない

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    アルクラ鬼ごっこ よくわからなくなりました

    一体どうして私は今暗闇の中一心不乱に走っているのだろうか。
    上がる息や響く自分の靴音を聞きながら思う。クラレンスは誰もが寝静まった夜の街を駆けていた。後ろから聞こえてくるもう1つの靴音から逃げながら思い返す。
    いつもの様にノクスの体の調子を見るために調整を行っていただけだ。培養液の中で目を閉じるノクスの隣でここ数日の活動データを紙に記しているだけだった。もう少しでデータがまとめ終わるというところで後ろから大きな音がした。驚いて振り返ると木製の扉が木っ端微塵になって破片が辺りに散らばっており扉があった場所にはあの聖職者が立っていた。
    「おい、何してるんだ。扉が壊れてしまっただろ…。」
    俯いたまま部屋に入ってきたアルフレッドに声をかけるがどうやら様子がおかしい。神よ……あぁ………何処へ……など小声で呟きながらフラフラとしている。本や机にぶつかってもお構い無しに歩き回るアルフレッドを見て一体なんなんだと近づいた。近づいてしまった。
    「貴重な資料を踏むな!!聞いてるのか!!」
    何か悪い予感を感じていたのだがアルフレッドの行動を見てつい、目の前に立ち口を出してしまった。髪に隠れた目と目線が合う。どこか焦点があっていないような目を見た瞬間直感であ、不味い。とクラレンスは思ったが時すでに遅し。アルフレッドはクラレンスを見つけた後手を伸ばし、
    「お前が慰めてくれるのか?」
    と口元を歪め笑う。
    捕まったら終わる。逃げろ。と本能的に察知した。クラレンスは距離を取り瞬時に考える。ノクスの調整に支障が出るのは1番避けたい事項だ。物もできるだけ破損は避けたい、ならば部屋を出るのが先決だと考えた結果、アルフレッドが蹴破った扉の残骸へ向かって全力で走った。すれ違いざまに掴まれそうになるのを躱し部屋の外に出た。アルフレッドは口元に笑みを浮かべたまま追いかけてくる。暗く狭い通路をあかりも無しに走る。走る。深夜の街へ出る。そうしてクラレンスの逃走劇は始まった。
    (あぁ…肺が痛い…久しぶりの全力疾走…走るの適してるとはとても言い難い服装……闇雲に走っているからここが何処かももう分からない……どうしてこんな目に……)
    早くはないが遠ざかることのないもう1つの靴音から少しでも離れようとしているが一向に靴音は止まない。もっと細い路地へ…とクラレンスが考えて方向を変えた瞬間、今までゆっくりだった靴音が早くなった。
    (っ……!?なんで急に………足が……動かな……)
    急に追う速さを上げたアルフレッドから逃げようとしたがクラレンスの体力はもう限界だった。後ろから影が伸びてくる。あっという間にクラレンスの手首がアルフレッドに掴まれる。
    「!……いたっ……おいっ!聖職者!離せっ…!!」
    凄い力で手首を掴まれこのまま折られるのではないかと恐怖した。
    「~っ!!離せと…言った!!!」
    空いているもう片方の手を使い服に忍ばせていた薬品を顔に向かってかける。毒性も致死性も無いただの目くらまし用の液体だが沁みて痛い筈だ。それなのにアルフレッドの笑みは変わらずむしろ逃げようとするクラレンスを逃がさまいとより一層掴む力を強めてくる。
    このままだと本気で殺されかねんと考えたクラレンスは大人しくアルフレッドに捕まることにした。
    「……もう逃げないから腕の力を弱めてくれ…折られてはノクスの調整もままならなくなる。」
    一応交渉。とても正気とは思えないアルフレッドだがクラレンスが逃げないことを悟ったのか少しだけ掴む力を弱めた。
    殴るのか何処かへ連れ去るのかはたまた殺されるのか疲れからもうなんでもいいと思考を放棄し始めたクラレンスはアルフレッドの動きにされるがままになっていた。
    アルフレッドの手が顔の傍に伸びてきて…殴る方か……。と痛みに備え目を固くつむった。が、肌に感じたのは衝撃などではなく強く抱きしめられる感覚であった。
    は?と思わず声が漏れそうになるのを堪え静かにアルフレッドの動きを待ったが抱きしめる事以外何かしてくる様子は一向に無かった。アルフレッドの体温や鼓動、息遣い 髪の感触が妙に肌に残りソワソワしてきたので少しだけ身を捩ったら更に強い力で抱きしめられ痛かったのでやめた。ただ抱きしめられているのも暇なのでクラレンスもアルフレッドの背に手を回して抱きしめてみた。より体温が感じられて暖かい。早く帰りたい、と思いつつもこの熱の感覚は嫌ではないなと思ってしまった。アルフレッドがいつもの調子に戻るまでもう少しだけこのままでも良いか…と考えながらアルフレッドの胸元に顔を埋めてみる。大の大人2人が夜の街で何をやっているのか…段々冷静になってきた。アルフレッドが元に戻ったら絶対に事情を説明してもらう。覚悟しておけ。とクラレンスは抱きしめる力を強めた。
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