貝殻と侵入者「ねえ、この家に、最近誰か侵入してない?」
母が言った。私は侵入者の存在に気づいていたが、侵入者が怖くて、知らないふりをしていた。
私はお風呂に入った。いつものようなしんみりした空間。特に近所の声はない。誰も喋らない。誰も何も言わない。
お風呂の扉の向こう側に、大きな男性のような人影を見た。ぎょっとして、扉をガタンと開けた。向こうには誰もいなかった。ただ、空間が、緑か青の不気味な光を放っていた。
扉を閉めた。
私はベッドに移動し、スマホで連絡しようとした。
しかし、侵入者はすぐそこまで来ていた。般若の仮面を付けた男が、視界のはしに映った。
侵入者に勢いよく胸を刀で斬られ、私は倒れた。
起きて、侵入者を探した。侵入者は、あいつだけではなかった。
食いしん坊な子猫が侵入していた。
そいつは、箱の中身などを食い荒らしていた。
猫は、めぐまれている人間の家を妬んでいた。猫は食い意地が張っていた。
「そんなに大した家じゃないよここ」
冷蔵庫を開けた。意外と冷蔵庫に中身がたくさん詰まっていたのでびっくりした。これを猫に見せてはいけない。
私はおしゃべりをして、お茶を濁すなどしていた。
猫がなかなか納得してくれなかったので、私は
「里親を見つけてあげるよ」と言った。
そして猫を、猫を何匹も連れている里親の元へ連れて行った。
「わー、あのこイケメン」
食いしん坊猫はすぐに猫の輪の中に入っていった。
食いしん坊猫がイケメンと言った、目のくりくりした子猫がいた。
「あの子、猫の中でイケメンなんだ……」
この猫が虎のように大きくなり、性格も真面目になり、里親の守護者として尽くすのは、また別のお話。
侵入者(私を切ったやつ)には、なぜかスマホの中身を覗き見る技術があった。
私は敵の技術に気づいていた。敵には貝を投げつける奴がいた。違法薬物を取り扱っているやつもいた。
敵の情報を知ってしまったのが、狙われた原因のようだ。
私は学校の中にある海が入ってくるスペースで、貝殻を拾っていた。いろんな貝を拾った。私は貝が純粋に好きだった。くるくるのマダライモのような貝や、クリーム色の貝。敵が貝を投げて人を撃つ光景が、脳裏によぎる。
なんとかして敵から逃れよう。私は殺される運命だった。しかし、その運命を変えるにはどうすればいいか考えていた。
私が助かる代わりに、私とは違う女性が敵に討たれる未来も見た。
敵は違法薬物に手を出しており、学校で違法薬物に対しての説明が行われた。
ある者は、小さな可愛らしい少年だったのに、太った醜い姿になってしまった。ある者は、スラリとした好青年だったのに、すっかりやつれておじさんのような姿になってしまった。
……と、複数のメンバーが紹介されたが、私には、全員が、目の小さい牛の人形にしか見えなかった。畑に飾る、毛並みが妙に丁寧に表現されたゴムやセラミックの人形。
みんな小さな目が怖かった。人形に詰め込まれている。
海外では違法薬物がよく出回っているが、日本では薬物トラブルはあまり聞かない。
「薬物は正しいと思いますか?」
もちろんだめだ、絶対にダメだ、と思ったが、そのとき周りにいた子たちは頷かなかった。
みんなうつろだった。異様な空気だった。私にはそれがとても怖かった。
敵には電子技術を解析する能力もあったため、なかなかデジタルでの授業は難しいと先生は判断したらしい。
学校の授業は、パスワードを聞き、みんなで集まって、紙にみんなで絵を描いて、自分の存在を登録するしくみに変更された。
わたしは最後に紙に絵を描こうとしたが、他の生徒の絵がはみだして、わたしのスペースにも侵食していた。
学校に行く気がなくなった。いきたいのかもしれない。しかし、体が重い。
私は暗闇でうずくまっていた。その暗闇が、家か学校かは関係がない。
暗闇は暗闇である。
私は、遠隔で授業を受けることができないか先生に相談した。
しかし、あんなことがあったので、遠隔授業はできないらしい。(情報漏洩の危険がある)
私は授業に行った。
私の手は、なぜか青いどろどろとした液体で汚れていた。
しかし、手を洗う暇がなかった。
「うわ、あいつやっぱりきもいわ」
手を洗った。
みんなが集まっていた。
「もうちょっと女の子に好かれるようにするにはどうすればいいですか?」
さっき私に暴言を吐いた子が、先生に質問している。
「そのままでいいよ」
何も知らない姉が言う。
「小さなところでもっと優しくする。」
私はぷんぷんしながら言った。