Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ここあぱうだー

    @cocoa_powder_s

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 256

    ここあぱうだー

    ☆quiet follow

    魔人の王子の物語 むかしむかし、あるところに魔人の国の王子がいました。

    「ねぇ、どうしてみんな、僕と遊んでくれないの」

     王子は物心ついたときから、いつもひとりでした。 遊ぶときもごはんを食べるときもひとりです。 みんなお城のこと、他の国のことで忙しく、王子にかまっているヒマはないのでした。
    「ねぇ、僕といっしょに遊ぼうよ 。」
     王子はお城で働いている人たちに声をかけましたが、王子と会話するなど畏れ多いので、すぐに逃げられてしまいます。

     そんなある日、王子は自分が透明になれることに気がつきました。
     こわいメイドさんが、廊下の向こう側からやって来ていた、そのときのことです。
    「危ない、かくれなきゃ 。」
     王子は慌てて彫刻の影にかくれましたが、場所が狭いので、王子のお尻は丸見えでした。
    「怖いよぉ 。」
     王子がぶるぶると震えていると、なんということでしょう、王子のお尻がみるみるうち に透明になっていくではありませんか。

    「そうだ この能力で、お城の外に出て、みんなにいたずらしちゃおう 。」
     王子は透明になると、コックさんたちのための通路から、外に飛び出してしまいました。

     透明になる能力を使い、王子は町のあちらこちらで悪さをしました。
    「おい 野菜がなくなったぞ」
    「お菓子を盗んだのは誰だ」
     町の人たちはもうかんかんです。
     王子は、自分のことをみんなが話しているのが嬉しく なり、るんるんと踊りながら町を飛び出しました。
     町をでると、王子と同じくらいの年の子どもたちが広場で遊んでいました。
     広場のベンチにはいろんなおもちゃが置かれています。 水鉄砲に木の実の人形、パチンコ。王子の見たことがないおもちゃばかりです。
    「そうだ この子たちにもいたずらしちゃおう 。」
     王子は水鉄砲を手に取り、そのまま逃げてしまいました。
    「おい、水鉄砲がなくなってるぞ 。」
     水鉄砲がなくなったことに気づいた子どもたちが、なにやら騒いでいるようです。

    「あ こんなところに足跡がある」
    「盗んだやつは絶対に許さないからな」
     子どもたちは、王子を追いかけ始めました。
     王子は、行く先々で、いろんなおもちゃや、お菓子をとっていってしまいました。 町の子ども達は、王子を追いかけました。もうかんかんです。
     やがて王子の噂は、街でも有名なガキ大将の耳に入りました。
    「なんだって 許さん。絶対にこらしめてやる」

     王子はやがて、町はずれの高原へとやってきました。背の高い草花が風でゆれています。
     そこに子どもたちがやってきました。
    「おい 早く返せよ」
    「みんながあなたのせいで困ってるの 。」

    「こわい」
    王子は慌てて逃げました。

     逃げた先では、橋がありました。橋の下では静かに大きな川が流れていました。
     王子は橋を渡り、もっと遠くへ行こうとします。
     そのとき、街で有名なガキ大将が、王子に追いつきました。
    「おまえ、許さん」
     ガキ大将はそう言って、王子の足に向かって、パチンコを打ち込みました。
    「あぁっ」
     王子がよろめきます。 しかし、なんということでしょう。運の悪いことに、よろめいた王子は、そのまま橋の下の川へと落ちていったのです。
    「えぇっ」
     これにはガキ大将もびっくりです。 川に流されながら、王子は必死にもがいていました。 しかし、その動きにどんどん元気がなくなっていきます。
    「僕を......ひとりぼっちにしないで......」
     王子の姿はどんどん透明になっていき、最後には、その姿が消えてしまいました。
     王子のもがいた川は、まるで何事もなかったのように静かに流れるのでした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator