63 アル空妹の蛍が使う部屋の隣に、空の自室はあった。
室内には勉強で使うデスク、主にゲームの時に活躍するテレビ、お菓子を置くのに重宝するローテーブルがある。そして現在、空が体を潜らせているベッドが、部屋の主人を抱き止めている。
「ああ〜も〜さいあくだ〜」
呻く空の声に反応する誰かはいない。虚しく消えていくじとりと重い言葉に、さらに眉間に皺が寄る。
本当なら今頃、アルベドと映画を観ているはずだったのに。
それがどうして、当日になって風邪なんか引いてるのか。空は自分の身体にずっと悪態をついていた。
ベッドの上で、仰向けになったりうつ伏せになったり忙しなく動きながら、枕元に置いた携帯に手を伸ばす。メッセージの着信は……特にない。知っていて、アルベドとの最後のやりとりを読み直す。
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